初夏に合うコンビニお手軽白ワイン 10本を飲み比べ
エンジョイ・ワイン(11)

白ワインの季節がやってきた。グレープフルーツや桃、パイナップルといった果物の甘酸っぱい香りとスキッとした酸味が特徴の白ワインは、気温がぐんぐん上がり始めるこれからの季節にピッタリのワイン。今回は大手コンビニチェーンで売られている、1本1000円未満で買える白ワインを比較試飲しランキングした。
方法はワインの資格を持つ愛好家5人がブラインドテイスティングし、香りや味わいをコメント。同時に5点満点で点数を付け、5人の平均点で順位を出した。
試飲した5人が異口同音に指摘したのが、コンビニ白ワインの多彩さとレベルの高さ。シニアワインエキスパートの資格を持つ会社員の齋藤稔さんは「コンビニワインは大量生産タイプで味わいも似たり寄ったりというイメージを持っていたが、非常にバラエティーに富んでいて驚いた」と述べた。
シニアワインエキスパートでワイン検定の講師も務める松島千冬さんは、「チリやカリフォルニアなど、いわゆる新世界のワインはアルコールや樽(たる)の香りが強すぎてバランスの悪いものも多いが、今回テイスティングしたワインはそういった印象は薄く、よく造られているものが多いという印象を受けた」と評価。航空会社の客室乗務員でシニアソムリエの波岡千恵子さんも「よい意味で裏切られた」と感想を述べた。
もちろん1本何千円もする高級ワインと比較すれば香りも味わいも見劣りするが、「この値段なら全然悪くない」との意見で一致した。
試飲したワインの間で点差がついた最大の要因は白ワインのおいしさを決める2大要素である果実味と酸味のレベルだ。高得点のワインは総じて、果実の華やかな香りがしっかりと感じられ、同時に心地よい酸味が余韻に残った。逆に低得点のワインは酸味はあるものの果実味が物足りなかったり、その逆だったりとバランスの悪さが目立った。

試飲した10本の中で唯一の4点台。ソーヴィニヨン・ブランは果物の豊かな香りや、さわやかなハーブの香りが特徴の品種で、白ワインではシャルドネに次いで人気が高い。中でもニュージーランド南島マールボロ地区のソーヴィニヨン・ブランは、よく熟したトロピカルフルーツの香りが魅惑的で、世界的に有名だ。
日本だと通常この値段では買えないが、このワインはボトルでなくバルクで輸入し日本国内で瓶詰めすることで、製造コストを引き下げているようだ。バルクワインは安物のイメージも強いが、保存技術や輸送技術の進化で、最近は味わいがよいものも増えている。

元航空会社の客室乗務員でシニアソムリエの市川朋依さんは「酸味が豊かで、かつボリューム感もあり、私の好きなタイプ」と評価。酸味の強いワインは飲み慣れていないと酸っぱいと感じることもあるが、「豊富な果実味のおかげで酸の突出感はない」と話し、「これからの季節、フルーツを添えたサラダを食べながら、テラスで飲むには最高のワイン」と付け加えた。
5人とも高得点を付けたが、とくに女性3人の評価が高かった。女子好みのワインと言えるかもしれない。

チリワイン。カチャポアル・バレーは盆地状の地形のため夏場は日中の気温が30度を超え、ブドウがよく熟す。一方、アンデス山脈から吹き下ろす冷たい風の影響で夜間の温度が下がるため、ブドウは適度な酸も維持し、果実味と酸味のバランスのとれたワインに仕上がる。
「ピクニックしながら、フルーツサンドと一緒に味わいたい」(松島さん)、「ボンゴレを食べながら飲みたい」(齋藤さん)、「優しくて穏やかな印象なので、和食と合わせてもよい」(市川さん)など、シャルドネの特長でもある料理との相性の良さを指摘する声が多かった。また、「まとまった味わいなので、仕事の後、軽く一杯飲みたい時にぴったりのワイン」(波岡さん)という意見もあった

アイレンはスペインのブドウ品種で、日本ではほとんど知られていない。シニアワインエキスパートで、薬剤師としての専門知識を生かしたワイン情報をブログで発信している鈴木明人さんは「フレッシュなリンゴや洋ナシ、パイナップルの香りがし、フレッシュな酸味も感じる。後半にほんのりと感じる苦みがアクセントになって、とても飲みやすいワイン」と評価した。合わせる料理に、齋藤さんは「カルパッチョ」、松島さんは「エビやタケノコのフリット」を提案した。

チリワイン。セントラル・バレーは首都サンティアゴの南に広がる、カチャポアル・バレーを含む広大なエリアで、安旨(やすうま)チリワインの主産地だ。
松島さんは「黄桃やトロピカルフルーツのような豊かな果実の香りがし、酸味はやや控えめで、アルコールは比較的高い。こうしたタイプのワインは、一杯目はおいしいが、何倍も飲むと飽きるので、ひとりで飲むよりはパーティー向きのワイン」と述べた。市川さんも、「香りが華やかでほんのり甘みも感じ、女子が好きそうだが、アルコール感が強いので、飲み疲れしそう」とほぼ同意見。持ち寄りパーティーにおすすめのワインだ。

オーストラリアのシャルドネ。オーストラリアには「イエローテール」という世界的な安旨ブランドがあるが、イエローテール以外にも安旨ワインが多いことがわかった。香りに白い花のニュアンスが感じられ、鈴木さんは「コンビニのから揚げと合わせたらおいしい」とコメントした。
今回、試飲用のワインを集める過程で、コンビニ間で品ぞろえの差がかなり大きいことも分かった。自分にあった白ワインを探すなら、セブンイレブンがおすすめだ。
(ライター 猪瀬聖)
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