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今日も走ろう(鏑木毅)

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それぞれのリーダーシップ 思いをいかに伝えるか

2019/4/25 6:30
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今週末に富士山麓でウルトラトレイル・マウントフジというトレイルランニングの世界大会が開催される。全長165キロメートル、登りを足した累積標高は8000メートルにも及び、制限時間は46時間で国内外から2400人の選手が集結する。

この大会はヨーロッパアルプスのモンブラン一周をめぐるウルトラトレイル・デュ・モンブラン(現UTMB)での私の経験をベースに2012年から開催している。大会の開催は並大抵の苦労ではなく、関係する行政機関や地元との調整、安全管理やコース設定など志を同じくする多くのメンバーやボランティアの思いがなければ到底できなかっただろう。

ただ私にとっての苦労は実は他の部分にもあった。自分から「レースを作りたい」と言い出したこともあり、実行委員長として大会をけん引する立場であることだ。40歳で公務員を辞めプロトレイルランナーとなったが、ずっと役職はなくリーダーとしての経験がなかった。そもそも比較的内向的な性格で、これまで人前に立って行動する役割をあえて避けてきた。逆に競技では内にエネルギーをため込む性格ゆえ世界で闘えたともいえる。

私は泣いてしまうリーダーだ(2016年UTMFの距離短縮を発表)

私は泣いてしまうリーダーだ(2016年UTMFの距離短縮を発表)

リーダーとしての私の大きな欠点は人に強く言えないことである。性格的なものに加え、サラリーマン時代に剛腕な幹部から下りてくる指示に苦労した経験もあり、人に指示すること自体、ついためらってしまう。何と言ってもつらいのは、最終的な判断を自分自身が下さざるを得ないことだろう。

2016年大会では悪天候のため大会の開催の可否が注目されていた。開催するか否かは我々の内部でも意見が二分した。国内外から集まった選手を失望させたくない思いと、それとは裏腹に全員が無事に帰宅してほしいという苦悩の末、結局は160キロを約4分の1の約40キロに短縮、変更した。会場でそれを伝えなくてはならず、世界中から集まった選手の顔を壇上から見た時には、無念さと選手への申し訳ない気持ちで思わず涙があふれ、おえつで言葉をうまく発することができなかった。やむを得ないこととはいえ自身が下した決断の重大さにさまざまな思いがあふれた。リーダーとしての覚悟や孤独を、その後も何度か痛感させられたことがある。

今でも私がリーダーに適任かといえばそんなことは決してないだろう。相変わらず惰弱の身ではあるけれど、自分の思いや考えを自分なりの言葉で折に触れさりげなく語り、メンバーが同じビジョンを持てるよう努力をし、少しずつ組織をまとめる面白さを感じている。以前は理想のリーダー像にとらわれすぎていたように思う。リーダーシップの取り方は人それぞれ。要は自分の思いをいかに組織全体に伝えるかが最も大切だろう。これからも自分なりのスタイルで役割を全うしながらも、いつも私を支え至らないところをサポートしてくれるメンバーに感謝の気持ちを忘れないように心がけたい。

(プロトレイルランナー)

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