2019年5月22日(水)

ミャンマー最高裁、ロイター記者の上告棄却

東南アジア
2019/4/23 13:05
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【ネピドー=新田裕一】ミャンマー最高裁判所は23日、イスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害問題の取材中に国家機密を入手したとして有罪判決を受けたロイター通信の記者2人の判決公判で、上告を棄却した。それぞれ禁錮7年の下級審判決を支持した。報道の自由への侵害だとして欧米諸国からの非難が強まりそうで、外資誘致に影響を与える可能性がある。

最高裁判決で有罪が確定したロイター通信のチョー・ソウ・ウー記者とワ・ロン記者(2018年、ヤンゴン)=ロイター

最高裁判決で有罪が確定したロイター通信のチョー・ソウ・ウー記者とワ・ロン記者(2018年、ヤンゴン)=ロイター

最高裁判決で有罪が確定したのは、いずれもミャンマー人のワ・ロン記者(33)とチョー・ソウ・ウー記者(29)。治安部隊の掃討作戦中に起きたロヒンギャ虐殺疑惑を取材していた2017年12月、取材先の警察官と面会した直後に逮捕された。

機密情報の収集を禁じる国家機密法に違反したとして一審、二審でともに7年の禁錮刑を言い渡された。弁護側は「逮捕は警察が仕組んだワナだ」と無罪を主張したが、裁判所は受け入れなかった。

逮捕後、国軍は10人のロヒンギャ住民虐殺について、一部の兵士や警察官が関与したと認めた。2人の取材をもとにしたロイター通信の虐殺事件報道は今月15日、ピュリツァー賞(国際報道部門)に選ばれた。

ロイター側のキン・マウン・ゾー弁護士は判決後に記者団の取材に応じ「判決は国のイメージと名誉を損ない、報道の自由を脅かす」と批判した。最高裁の決定に対しては不服申し立てが可能だが、判決が変わることは期待できず、弁護団は申し立てをしない方針を示した。「記者の釈放に向けて全力を尽くす」と述べ、大統領令による恩赦などを求めていく考えだ。

国連のグテレス事務総長は「早急に釈放すべきだ」と述べるなど、国連や人権団体、欧米諸国などは繰り返し懸念を表明してきた。今回の判決

23日、ミャンマー最高裁判所前で記者団の取材に応じるロイター通信側弁護士(ネピドー)

23日、ミャンマー最高裁判所前で記者団の取材に応じるロイター通信側弁護士(ネピドー)

は言論の自由の問題だけではなく、政権側のロヒンギャに対する抑圧姿勢にも変化がないと受け止められそうだ。民主化の旗振り役と期待されたアウン・サン・スー・チー国家顧問に対する国際社会の圧力が強まるのは必至だ。

在ミャンマー欧州商工会議所のフィリップ・ローウェリセン事務局長は「今回の判決は、欧州連合(EU)側との今後の交渉にネガティブな影響を与えかねない」と述べた。EUは人権問題を理由にミャンマーに対する特恵関税の剥奪を検討している。ミャンマーの主力産業の一つである縫製品は欧州が最大の輸出先なだけに、特恵関税がなくなれば縫製業に深刻な打撃を与えかねない。

インフラやエネルギー、通信など多くの分野で投資ブームに沸いたミャンマーだが、民主化後退に対する失望などから近年では投資熱が冷めつつある。同国への直接投資額(認可額ベース)は2015年度をピークに3年連続で減少している。

政権側は金融業や流通業への外資参入を認めたほか、会社法を改正して外資企業がオンラインで登記できるようにするなど、規制緩和を通じた投資受け入れ策を相次ぎ打ち出している。

しかし、ロイターの記者逮捕以外にも、ネット上の中傷行為に罰則を科す電気通信法を利用し、政治家や国軍関係者が報道記者を訴追する事例が相次ぐ。民主化の停滞に対する欧米諸国の失望感は今後広がりそうで、経済成長にとっては強い逆風になりそうだ。

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