高橋知事退任 道政16年、成果も課題も

2019/4/22 20:23
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北海道の高橋はるみ知事が22日、退任した。40代で初当選した2003年から4期16年、「食と観光」を軸にトップセールスで道内経済を活性化し、企業誘致でも一定の成果を出した。一方で人口減少の流れに歯止めはかからず、財政立て直しのための歳出削減は職員の間に停滞感を生んだ。JR北海道の路線維持をめぐる問題をはじめ、市町村との難しい調整も宿題として残った。

職員に見送られながら道庁を後にする高橋知事(22日、北海道庁)

「思いは語り尽くせないが、北海道の元気をはぐくみ、未来に向けた発展の礎を築けた」。高橋知事は22日の退任記者会見で、医療や交通、自然災害など様々な出来事を交えながら自身の16年間を振り返った。「北海道はまだ伸びしろがある」とした上で、鈴木直道新知事に「若い発想力で課題を乗り越え、北海道を未来へと引き継いでほしい」と託した。

高橋知事は03年4月、9人が出馬する乱戦となった知事選を制して初当選。経済産業省出身の強みを生かし、まずは経済の活性化に取り組んだ。食分野では新鮮で豊富な北海道の食材を知事自らが先頭に立って発信。道民に道産米の消費を促す活動「米チェン」では自身もCM出演し、就任時に60%前後だった道産米の道内食率は80%以上になった。

「北海道ブランド」の確立は成果を上げた。日本食ブームにも乗って道産食品の認知度はアジアで急速に高まり、17年の輸出額は03年比4倍の674億円に増えている。

観光では、中国や韓国などアジアを中心に訪日客の取り込みに力を入れた。新千歳空港と海外を結ぶ航空路線の増加も追い風に、17年度は03年度の約10倍の279万人の外国人が北海道を訪れた。日本全体の訪日客の約1割を占める規模だ。

製造業では、自動車部品大手のアイシン精機デンソーを誘致。最近では脊髄損傷の治療向け再生医療に取り組む医療機器・医薬品のニプロの研究拠点の呼び込みに成功。17年度までの3年間だけでも年100件以上を誘致している。

ただ、道財政の改善には苦しんだ。道の借金にあたる道債残高(臨時財政対策債除く)は就任時に5兆円を超えて破綻寸前。公共事業費の圧縮や道職員の給与カットなどで歳出を削減し、一時は24%台にあった収入に占める負債返済の割合を示す「実質公債費比率」を改善した。財政健全化団体への転落は回避したものの、長年の緊縮財政は副作用を生んだ。

歳出削減で自由度の高い予算は縮小。「大胆な独自政策が年々打ちにくくなった」(道職員)との声も漏れ、停滞感は採用現場での不人気にもつながった。18年度末まで続いた給与削減や遠方への転勤も敬遠され、学生の道庁内定辞退率は6割を超えた。窮地を脱した実質公債費比率も、全国最悪の水準が続くのに変わりはない。

道内総生産(名目)をみると、15年度時点で農林水産業は03年度比22%増の8238億円。製造業も食料品や輸送用機械などが伸びて同5%増の1兆9573億円だった一方、公共事業の縮小を背景に建設業は同24%減の1兆3285億円と明暗が分かれている。

失策が少なく、手堅い道政運営に定評があった高橋氏だが、市町村や民間企業との調整が必要な問題は苦手とした。14支庁あった道の出先機関を見直す10年度の支庁改革では、地域からの反発を受けて9総合振興局と5振興局への再編にとどまり「看板の掛けかえ」と批判を浴びた。「思い切った決断や政策が見られない」(道内経済界)との指摘は根強かった。

典型的だったのがJR北海道の路線見直し問題だ。赤字路線維持のための地元自治体による財政支援では、関係自治体との調整がつかず19年度当初予算への反映を断念。カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致でも態度を明確にせず、曖昧な形のまま鈴木新知事に判断を先送りする。

高橋氏は19年夏の参院選に出馬し、国政への転身を目指す意思を表明していて「これからも北海道のために働きたい」と述べた。長年の重責から解放された安堵か、職員に見送られながら道庁に別れを告げた高橋氏はすがすがしい笑顔を見せた。

(塩崎健太郎)

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