2019年5月25日(土)

イタリア、債務削減の対EU公約未達へ 19年度予算

ヨーロッパ
2019/4/22 18:45
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【ブリュッセル=竹内康雄】イタリアの財政健全化が遅れている。同国政府は2018年12月に欧州連合(EU)の欧州委員会と合意した財政赤字削減策を事実上後退させる方針を表明した。国有資産の売却が予定通り進まず、経済成長の鈍化も重荷になった。財政運営を巡ってコンテ政権と欧州委が再び対立するのは確実で、金融市場の火種になる可能性がある。

イタリア財政のかじ取りを担うトリア財務相(19年1月、ブリュッセル)=ロイター

「イタリアの経済減速は加盟国で最も大きい。財政赤字を減らし続けることが重要だ」。欧州委のドムブロフスキス副委員長は17日付のギリシャメディアとのインタビューでこう語り、財政規律を緩めようとする伊政府をけん制した。

同国政府は9日、19年の成長率見通しを従来の1.0%から0.2%に引き下げるとともに、国内総生産(GDP)比の財政赤字が2.4%になるとの見通しを示した。伊政府は欧州委と19年の財政赤字を2.04%にすることで18年12月に合意し、EU財政ルール違反に対する制裁手続きの発動を逃れていた。

理由の一つは財政赤字削減の柱だった国有資産の売却が計画通りに進んでいないことだ。同国政府は保有する企業の株式など2兆円超の資産の売却を年末までに終える計画だったが、伊議会予算局は16日、「実行は難しい」との見解を示した。

もう一つは、ドムブロフスキス氏が言うように経済の低迷だ。18年10~12月期の実質成長率は前期比でマイナスとなり、景気後退入りの目安とされる2四半期連続でのマイナス成長となった。世界的な貿易摩擦や中国経済の減速などを受け、企業マインドは悪化傾向にある。政府は税収増が見込みにくい中、景気刺激策を検討しているが、国債に頼らざるを得ない。

ポピュリスト(大衆迎合主義)と目されるコンテ政権は18年6月に発足した。財政拡張を志向した19年の予算案を巡って欧州委と激しく対立した。ユーロ圏3位の経済大国の財政規律の緩みが他国に波及しかねないと懸念した欧州委は、EUの財政ルールに違反していると制裁をちらつかせ修正を迫った。

このときは伊政府は矛を収めた形になったが、コンテ政権の基本姿勢が変わったわけではない。伊政府は20年に付加価値税(消費税に相当)の引き上げを予定する。ロイター通信によると、伊政府は230億ユーロ分の増税を計画している。しかしトリア経済・財務相は17日、「代替案を検討したい」と語った。

トリア氏は国民に痛みを強いる政策を避ける考えを示した格好だが、イタリア銀行(中央銀行)によると、付加価値税の引き上げなしでは20年の財政赤字は3.4%に上昇する。伊政府が目指す2.1%を大きく下回ることになり、EUがイタリアの財政規律への懸念を強めるのは必至だ。

「イタリアの後退を心配している」(ユンケル欧州委員長)。金融市場ではイタリアの財政健全化の遅れを懸念して、イタリア国債が売られる場面があった。今後、伊政府と欧州委の対立が再燃するのは確実で、再びイタリアリスクが注目を集めそうだ。

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