タイ・カンボジア間、鉄道開通45年ぶり 域内分業活発に
【バンコク=村松洋兵、ハノイ=大西智也】タイ・カンボジア両政府は22日、両国間を結ぶ国際鉄道を開通する調印式を開いた。鉄道の運行は、両国の関係悪化を受けて1974年に停止して以来45年ぶり。タイは人件費が高騰しており、製造業は安い労働力を求めてカンボジアに生産を分業する動きが出ている。これまで両国間の物流はトラック輸送しかなく、鉄道物流の整備で今後、域内分業が加速しそうだ。

今回、タイ側国境のアランヤプラテートと、カンボジア側のポイペトの間が鉄道で結ばれた。これで両国の首都のバンコクとプノンペンの鉄道での往来が可能になった。
今回の45年ぶりの国際鉄道の再開は、もともと国境を巡る問題などで関係が悪かった両国が、東南アジア域内での経済活発化や関係改善に向け、2015年にタイのプラユット暫定首相とカンボジアのフン・セン首相との会談で合意したことが前提にある。
タイに進出する企業のメリットは大きそうだ。自動車や電機などの製造業が集積しているタイでは人件費の高騰が続き、労働集約的な工程を人件費の安い周辺国へ移管する「タイプラスワン」の動きをどう広げるかが課題だった。
既にタイとの国境近くのカンボジアのポイペトには工業団地があり、タイからの製造業の進出が相次ぐ。タイとカンボジアでは互いの国で製造した製品を輸出入し、加工したり組み立てたりする動きが活発だ。ただ、これまではトラック輸送しかなく、輸送コストの高さが課題だった。
鉄道開通により一度に大量の荷物を時間通りに運べ、コストダウン効果が見込める。業界からも「物流の選択肢が広がり、ビジネスのプラスになる」(日系物流大手)といった声が上がる。
関連企業・業界