欧米の対中政策、今は団結モード(The Economist)

2019/4/23 2:00
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The Economist

中国の西側社会に対するメッセージは、次の3段構えからなるとされてきた。(1)中国の台頭は避けられない (2)中国に協力する国は多大な恩恵を受けられる (3)従って抵抗しても無駄だ、と。

緑が限られる北京にあって各国の大使館が集まる緑が豊かな一角で中国の台頭を疑問視する人はいない。だがその台頭は中国への称賛と同時に、様々な欲望と不安を引き起こしている。ここへ来て中国に協力すればそれだけの見返りがあり、従って中国に抵抗することは無駄だという点について疑問視する向きが強まっている。

一帯一路などを強気に進める中国の姿勢が西側諸国の結束をもたらしているという(記者会見する王毅外相)=AP

一帯一路などを強気に進める中国の姿勢が西側諸国の結束をもたらしているという(記者会見する王毅外相)=AP

2つめの中国と連携する国には報酬が待っているという説をもう少し詳しく考えてみよう。中国に駐在中の各国の外交官たちは、内輪で議論する際は以前より現実的になっている。彼らの考え方は「中国は脅威であり、米国を踏み台にして必死に豊かで強い国になろうとしている」という米政府の意見にどうしても影響される。だが、もっと広い意味で、彼らの中国への見方は様変わりしつつある。

■一帯一路への不満を高める中東欧諸国

ほんの数年前まで外交官らは中国への対応の仕方を議論するために集まっても、会食の席に着くとすぐさま自国が中国といかに仲がいいかという自慢話を発言の間に滑り込ませていたものだ。中国は扱いにくいとぼやいてみせる一方で、「いや、もちろん我が国の対中関係はバラ色だ」と。だが、こんな自慢は今や影を潜めるようになった。

中国への認識を改める傾向は、ドイツのような国にまで広がっていると外交官らは指摘する。ドイツと中国は互いを必要としているとはいえ、ドイツは信頼の高い様々なブランドや誰もがうらやむ技術を抱えていることから、対中国では優位な立場を築けていると考えられてきた。だが、その独有数の大企業でさえ、中国政府の支援を背景に独企業を打ち負かして取って代わろうとする中国企業との競争に巻き込まれ、最近は中国との関係への認識を改めつつあるという。フランスと英国も中国との関係を現実的に考えるようになってきた。もっとも英国は、欧州連合(EU)から離脱した後は、シンガポールのように中国の豊富な資金を扱う金融センターになることを夢見ているとされる。

中国はここ数年、国際機関が既に多数あるにもかかわらず、自国主導の国際会議を相次いで発足させてきた。しかし、そうした国際会議についても、多くの国は以前より冷静な見方を強めている。中国が中東欧16カ国と開く定例の首脳会議「16プラス1」に、ギリシャが4月12日、参加を表明したことは中国の勝利を示したかのようにみえた。これは中国が2012年に中東欧諸国との協力を深めるため発足させた枠組みで、参加国のうち11カ国はEU加盟国だ。このことは、中国が欧州の分断と支配を狙っているという懸念を招いてきた。

ギリシャが資金力の豊富な友好国である中国を喜ばせようとしたのは確かだが、政治的には旬を過ぎたグループに加わったといえるかもしれない。というのも今や「17プラス1」になったこの枠組みの最大の参加国ポーランドを含む各国は、中国から期待したほどの商機や投資を実現できないこの枠組みに次第にうんざりし、不満を高めている、と西側の外交官らはみているからだ。

■北京の各国大使館が団結して動き出した

イタリアは3月23日、米国やドイツなどからの忠告に逆らい中国の広域経済圏構想「一帯一路」に協力する覚書を中国と交わし、中国に明白な勝利をもたらした。西側各国は2~3年前は、一帯一路は自国企業に大きな商機をもたらす可能性があると持ち上げていたが、最近は懐疑的だ。参加国を借金漬けにし、環境を破壊し、アフリカやアジア、アジア太平洋の多くに中国の基準を導入することで他国の参入をできなくしてしまう懸念があるなど、マイナス面を指摘する例が増えている。

習近平(シー・ジンピン)国家主席が4月25~27日に北京で主催する一帯一路に関する首脳会議前、中国の当局者や学者は、他の国や多国間で資金を供給する機関も今こそ一帯一路に参加し、資金を供給すべきだと主張した。こうした主張は、「中国の台頭に抵抗しても無駄だ」という3つめのメッセージについて改めて考えさせる。

中国の強気な行動が世界各国を団結させたというのは言い過ぎだが、中国への不満に対し各国は協力するようになってきた。北京の各国大使館の間では、新旧様々な集まりが最近、活発になり、以前より具体的な問題に対応するようになってきている。一部は情報共有を目的とした集まりだ。例えば「グループ・オブ・ファイブ」は公式な存在ではないが、米、英、独、仏、日本の大使が少なくとも月1回集まっている。米、豪、英、カナダ、ニュージーランドによる機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」は定期的に会合を開いている。米、豪、英、カナダ、仏、独、日本、韓国、およびEUが参加する経済問題に焦点を当てて共通の政策を目指す「ライクマインディッド・ナイン(L9、似た考えの9カ国)」といった集まりもある。

政治担当で人権も担当する大使館員たちは、互いに協力するためにかなり以前から会合を持ってきた。そうして彼らが昨年まとめた報告書は、彼らの上司である各国の駐中国大使に、中国政府による新疆ウイグル自治区での弾圧を問題視するきっかけとなった。中国当局は新疆の再教育キャンプに数十万人に上るイスラム教徒の少数民族ウイグル族を収容し、さらに数百万人を厳しい監視下に置いているとして非難を浴びている。

西側15カ国の駐中国大使は昨年、異例にもカナダによる主導で、新疆ウイグル自治区の共産党トップを務める強硬派の陳全国書記に会談を求める書簡を送った。

このことは、中国政府が欧州各国の駐中国大使に新疆を視察するよう半ば強制的に要請した際、駐中国大使らが中国側も驚くほどの結束ぶりを示して、この要請を拒否することにつながった。当局は当初、3月27~29日に新疆を夫妻で訪問するよう各国大使に求め、24時間以内に回答するよう要請していた(もっとも、陳氏との会談は予定されていなかった)。EUの駐中国大使はこの要請を断った翌日、新疆への訪問を招待するのは今回限りで、断れば今後何らかの影響を招くことになると告げられた。

新疆での人権弾圧に対する各国の懸念は一様ではないが、EU加盟全28カ国とノルウェー、アイスランドは訪問要請を断ることで足並みをそろえた。視察を受け入れたのはアルバニアとセルビアだけだった。

■問題は西側のリーダーが存在しないこと

ある外交官は「中国が強気な姿勢を示してきたことが、西側諸国の間に一種の団結したコミュニティーを復活させることになったのは間違いない」と指摘する。過去にも西側諸国が強い結束を示した一つが1989年の流血の惨事となった天安門事件の後だった、とこの外交官は語る。もっとも天安門後の結束は長続きしなかったという。今も西側の結束には限界がある。この外交官は、トランプ米大統領の自己中心的で力こそが正義だとする政策は、欧州より中国に評価されていると批判する。そのため、米欧日が団結して展開できる対中政策が存在しない。つまり「西側という世界は存在していない」に等しいという。

別の外交官は、もっと忍耐が必要だと指摘する。仮に別の米大統領が普遍的な価値観を守ろうとしつつ、中国の強硬姿勢にも抵抗しようとするのであれば、「西側諸国はそのリーダーと一緒に戦う準備ができている。だが、そんな米大統領は今、存在しない」と指摘する。こんな主張に中国当局はあぜんとするかもしれない。だが、西側にこのように結束を強めさせたのは、中国自身である。

(c)2019 The Economist Newspaper Limited. April 20, 2019 All rights reserved.

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