2019年6月17日(月)

鍋にもにじむ関西の個性
(あのまちこの味)

関西タイムライン
関西
2019/5/6 6:00
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 日本経済新聞大阪夕刊の「もっと関西」は、2019年5月7日付から「関西タイムライン」(KANSAI Timeline)に生まれ変わります。タイムラインは過去から今、未来への移り変わりを意味します。私たちが働き、暮らす関西について多角的に報じてきましたが、これからもさらに魅力を追求していきます。毎週水曜日に掲載してきた各地の名物・名産「あのまちこの味」の中から、一部を紹介します。

魚すき(大阪市)

四季の海鮮、甘辛だしで

祝い事のごちそうとして、江戸時代から大阪・ミナミを中心に親しまれてきた「魚(うお)すき」。小ぶりの平鍋で熱した甘辛いだしで新鮮な魚の切り身や野菜などを煮焼きし、溶き卵につけて食べる「魚のすき焼き」だ。

火にかける前のだしに魚の切り身をつけて下味をつけた後、だしだけを鍋に移して焼き豆腐、生ふ、白菜やネギなどの野菜を入れて炊く。主役の定番はタイやサワラ、アナゴ。季節によって夏はハモ、冬はブリといった瀬戸内海の新鮮な魚も加える。サンショウの利いた甘辛いだしが生魚の臭みを封じ込め、身が硬くなる前にさっと食べる。

1864年創業の「丸萬本家」(大阪市住吉区)は、今も魚すきを提供する数少ない店の1つ。石川県出身の初代店主が、能登半島のしょうゆベースの魚の煮付け料理から発想を得たのが始まりという。9代目店主の後藤英之さん(56)は「豊富な魚が集まる瀬戸内海に面する大阪ならではの料理。昔ながらの味を後世に伝えていきたい」と話す。

(大阪社会部 丸山景子)

=2019年3月13日付掲載

ちりとり鍋(大阪市)

野菜やホルモン甘辛く

焼肉店やキムチ屋が並ぶ大阪市生野区のコリアンタウンは、鉄板焼きの「ちりとり鍋」発祥の地といわれている。掃除道具のちりとりの形に似た薄い鉄板を使うのが名前の由来で、肉やネギなどを焼き上げる。味噌やしょうゆの甘辛い味付けが食欲をそそる。

鍋は約20センチ角の薄い鉄板。正方形で両端に取っ手がある。赤身の肉やホルモンに下味をつけ、タマネギと青ネギをたっぷり盛って火にかける。野菜の水分が味をまろやかに仕上げる。仕事終わりに手軽に食べられる料理として、最近では家族連れや若い女性客から人気だ。

万才橋(大阪市)は約60年前からちりとり鍋を提供する老舗だ。鉄工所を営んでいた創業者がくず鉄置き場で鉄板焼きを提供したのがはじまりで、鉄くずを自分で折り曲げて鍋を製造したという。2代目の小川昌江さん(67)によると「『ちりとりみたいだね』とお客さんによくいわれる」という。「この鍋で食材をいためれば鉄分も補給できるよ」と優しく笑って教えてくれた。

(大阪経済部 土橋美沙)

=2019年2月13日付掲載

ハリハリ鍋(大阪)

鯨肉・水菜、元は家庭の味

鍋の恋しい季節だ。関西、殊に大阪では鯨肉と水菜が主役の「ハリハリ鍋」が名物だ。煮えた鍋に新鮮な水菜をサッとくぐらせ、火を通し過ぎないシャキシャキとした食感が名前の由来という。

神戸港に近い大阪では、鯨肉が入手しやすかった。家庭では皮の油を搾った残りの部分「コロ」をよく使った。カツオと昆布のだしに、酒、砂糖、しょうゆを加える。濃いめの味付けは子供も食べやすく、たんぱく質とビタミンを手軽に取れた。今でも大阪には、冬に水菜と鯨肉を一緒に売る八百屋があるという。

庶民の味として親しまれたが、1980年代の商業捕鯨停止を背景に、鯨肉の価格が上昇。少しぜいたくな料理になった。

大阪・千日前の鯨料理店「徳家」では、酒に合うようスープは薄口に仕上げ、隠し味として黒コショウと青唐辛子を効かす。肉はうま味が豊かで臭みが少ないミンククジラ。水菜は12月ごろから香り高い露地ものが入る。女将の大西睦子さん(75)は「家庭の知恵の味であり、文化。より多くの人が楽しんでほしい」と話す。

(大阪社会部 大沢薫)

=2018年12月12日付掲載

ぼたん鍋(兵庫県篠山市)

花咲くように盛りつけ

赤と白のコントラストが鮮やかなイノシシの肉が皿の上でぼたんのように大きな花を咲かせる。イノシシの肉を白菜などの野菜と味噌で煮込む「ぼたん鍋」は兵庫県篠山市が発祥とされる。イノシシの狩猟シーズンの秋から春にかけて、篠山にはぼたん鍋を目当てに多くの客が訪れる。煮込むほど肉は柔らかくなり、豊富な脂身もかむほどに甘い。

イノシシ肉を用いた鍋料理はほかの地域にもあるが、篠山市内の老舗旅館「近又」で、「15代目主人がぼたんの花のように肉を皿に盛ったのが『ぼたん鍋』と呼ばれる始まりだ」(近又の松尾健吾さん)という。当時、民謡の篠山小唄の歌詞を参考につくったとされ、篠山のぼたん鍋は見栄えのよさに定評がある。

今は肉の保存方法も進化し臭みはほとんどないが、かつて篠山では「イノシシが捕れると店先につるしていたため、臭みが増していた」(松尾さん)。この臭みを消すために味噌やサンショウで味付けを工夫したとされ、店ごとに違う味わいも楽しみの1つになっている。

(大阪経済部 岡田江美)

=2018年3月14日付掲載

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