2019年6月26日(水)

海の幸から生まれる名物
(あのまちこの味)

関西タイムライン
関西
2019/5/1 6:00
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 日本経済新聞大阪夕刊の「もっと関西」は、2019年5月7日付から「関西タイムライン」(KANSAI Timeline)に生まれ変わります。タイムラインは過去から今、未来への移り変わりを意味します。私たちが働き、暮らす関西について多角的に報じてきましたが、これからもさらに魅力を追求していきます。毎週水曜日に掲載してきた各地の名物・名産「あのまちこの味」の中から、一部を紹介します。

サバのなれずし(和歌山県北部)

発酵うまみを凝縮

ご飯と魚を一緒にして発酵させた「なれずし」は、すしの元祖ともいわれている。滋賀のフナずしが有名だが、和歌山でも郷土料理として親しまれている。県北部ではサバが使われており、昔は祭りの際のごちそうだったようだ。

サバを1カ月以上塩漬けにした後、1昼夜水につけて塩抜きする。ご飯とサバをアセの葉で巻き、おけに詰める。蓋をして重しをのせ、冬は1カ月近く、夏は1週間ぐらい漬けると出来上がり。フナずしと同様、強いにおいが特徴で、人によっては苦手と感じるかもしれない。味付けに酢や砂糖を使っておらず、食べると発酵による酸味が口に広がる。

なれずしを提供する「弥助寿司」(和歌山市)は明治時代に創業。4代目店主の岩崎守さん(74)は「最近はなれずしをつくる風習も減り、和歌山出身でも若い人はにおいで『腐っている』と勘違いすることもある」と苦笑する。ただ東京や大阪などから郵送による発注もあり、需要は根強い。「ニーズがある限り作り続けたい」と伝統継承に意欲を見せる。

(和歌山支局長 細川博史)

=2019年4月3日付掲載

ばらずし(京都府丹後地方)

サバに錦糸卵、色とりどり

黄色や赤など色彩豊かな具材やご飯がミルフィーユのように重なる京丹後の郷土料理「ばらずし」。京都府北部の丹後地方の家庭料理で、もともとは祭りの日に食べるごちそうとされてきた。火でいっておぼろ状にしたサバを使用するのが特徴で、まつぶたと呼ばれる専用の木箱にすし飯とサバを交互に重ねてつくる。最後に錦糸卵やシイタケ、紅ショウガをのせて彩る。一度にたくさん作り、四角く切って取り分けて食べるのが定番という。

現在も家庭料理として親しまれ、祭りやイベントでは多くの出店がばらずしを提供する。給食でも出される。家庭や店ごとに味付けや使う具材が少しずつ違うのも醍醐味だ。ばらずしを約40年前から提供している「とり松」(京都府京丹後市)はサバや錦糸卵、カンピョウなどを使い、他地域から来た人にもばらずしのおいしさを知ってもらおうと店での提供を始めた。サバはかめばかむほど甘辛い味が口に広がり、とり松の前川修さんは「昔のままの作り方にこだわっている。ぜひ丹後に来て味わってほしい」と話している。

(大阪経済部 岡田江美)

=2018年10月31日付掲載

タチウオ(和歌山県有田市)

今が旬、ご当地丼もブーム

さくっと揚がった肉厚なタチウオの天ぷらをほお張ると、口の中でふわっと身がとろける。白身魚ならではの上品な味わいだ。一年中取れるタチウオだが、今月がまさに旬だ。8~9月の産卵を控え脂がのっているためという。

スーパーでは切り身で売られることが多いが、体長1メートルを超す大物も。銀色に光り、刃物の切っ先のようなアタマの形が「太刀」に似ていることが名前の由来という。和歌山県有田市では紀伊水道沖で底引き網漁で捕獲し、箕島漁港に水揚げする。農林水産省によると、漁獲高は2016年に768トンと、2位の愛媛県今治市(352トン)を上回り全国トップだ。

最近のブームは「たっちょほねく丼」。小骨の多い点を逆手に取り、タチウオを骨ごとすり潰して揚げた「ほねく」と野菜のかき揚げに、あんをかけて丼にした。全国のご当地丼を競うコンテストで2017年まで4年連続受賞。「ネットで話題になり、北海道など遠方からの来客が増えた」(有田市の飲食店、まごころの味しんまち)。町おこしにも一役買っている。

(大阪経済部 伊藤大輔)

=2018年7月11日付掲載

しらす丼(和歌山県湯浅町)

濃厚しょうゆ、風味生かす

和歌山県湯浅町は「しょうゆ発祥の地」。素材の味を引き立てる食が観光の魅力で、その目玉の一つが「しらす丼」だ。紀伊水道で取れたしらすをご飯に乗せ、地元産しょうゆを加える。ありふれた料理ではあるが、水揚げされたばかりのしらすの新鮮な風味と、昔ながらの製法でつくられたしょうゆの濃厚な味わいが人気を集める。

町内にはしらす丼を提供する店が十数軒集まる。先駆けとなったのが「かどや食堂」だ。15年ほど前、店主の宮井功さんは地元産しょうゆを使ったしらす丼を売り出そうと考えた。ゆでたしらすには塩味がつき、単にしょうゆを加えるだけでは辛くなる。そこで有田産のミカンみつで甘みを加えることを考えた。この発想が現在の人気の火付け役となった。

その後、町内の他の店も提供するようになった。各店は梅干しを乗せたり、金山寺味噌を付け合わせに出したりするなど和歌山らしさを演出する。湯浅町はパンフレットやのぼりを製作し、今やご当地グルメとして定着した。

(和歌山支局長 細川博史)

=2018年5月2日付掲載

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