手間を惜しまず育てた風味
(あのまちこの味)

2019/5/2 6:00
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 日本経済新聞大阪夕刊の「もっと関西」は、2019年5月7日付から「関西タイムライン」(KANSAI Timeline)に生まれ変わります。タイムラインは過去から今、未来への移り変わりを意味します。私たちが働き、暮らす関西について多角的に報じてきましたが、これからもさらに魅力を追求していきます。毎週水曜日に掲載してきた各地の名物・名産「あのまちこの味」の中から、一部を紹介します。

丹波栗(京都府・兵庫県丹波地域)

甘くて大粒、献上の品に

京都府と兵庫県にまたがる丹波地域で収穫される「丹波栗(くり)」。粒が大きく香りや甘みが豊かなのが特徴だ。

その個性は丹波地域の昼夜の寒暖差にある。夜間、実が育つ時間帯の冷え込みが実を甘くするといわれる。甘みの強い丹波栗は古くから朝廷や幕府への献上品として上納される高級品だった。

平安時代の初期には栽培が始まったようだ。江戸時代に参勤交代の武士が郷里や江戸に持ち込んだことから、全国的に知名度が上がった。収穫の最盛期は9月半ばから10月半ばにかけて。公益社団法人の京のふるさと産品協会は丹波くりを「京のブランド産品」に認定し品質保持を図っている。

高品質で菓子作りにも需要の多い丹波栗だが、農家の高齢化で栗を効率的に収穫するための枝の刈り込みや新しい木の植え付けが難しくなりつつある。生産量は長期的に減少傾向にあり、自治体などが後継者育成を急いでいる。甘露煮のほか、地元ではパフェや大福、ようかんなどにも加工され、町おこしにも活用されている。

(京都支社 山本紗世)

=2018年9月12日付掲載

鳥飼ナス(大阪府摂津市)

大きな丸い実、甘み凝縮

大阪府摂津市鳥飼(とりかい)地区の「鳥飼ナス」が収穫期を迎えている。紫色が鮮やかなソフトボール大の丸い実が特徴だ。身が詰まり歯応えが良く、甘みも強い。肉質が緻密で煮崩れしにくいため、田楽や煮物などの料理に向いている。

府が認定する「なにわの伝統野菜」の1つで江戸期の文献に摂津の名産として登場する。大正から昭和初期には約60戸の生産農家があった。しかし、戦時中の食糧難で多くが米作に転換し一時は「幻のナス」とも呼ばれた。危機を乗り越えられたのは鳥飼地区の辻幸太郎さんが戦地から復員後も栽培を続けたためだ。市は1994年から地元農家の「市農業振興会」に栽培を委託し保存・普及に取り組む。

生産農家はなお少ない。「栽培に手間がかかる」というのは辻幸太郎さんの息子、佳男さん(77)だ。実が大きいため、多くの肥料とこまめな水やりが必要だ。30度程度の気温が栽培に適するが、今年は猛暑で例年より収穫量が少ないという。佳男さんは「摂津の伝統的な名産として守っていく。多くの人に食べてほしい」と話す。

(大阪社会部 宮沢翔)

=2018年8月1日付掲載

毛馬キュウリ(大阪・河内地域)

硬く細長く、栽培に手間

酢の物にすると、ぱりっとした食感が歯に心地よい。毛馬キュウリは普通のキュウリよりも淡い緑色で、硬く、形状も細長いのが特徴だ。

大阪府が認定する「なにわの伝統野菜」の1つで、江戸時代から戦前にかけて大阪市都島区の毛馬町近辺で栽培されてきたのが名前の由来。戦後は濃い緑色の品種が普及して食卓から姿を消したが、1990年代に入り大阪府が保管されていた種からの復活に成功。以来、大阪南部を中心に作られている。

「毛馬キュウリは手間キュウリ」と話すのは、富田林市で10年間栽培を手掛けてきた農家の松尾善一さん。曲がりやすい実をまっすぐにするため、竹筒で包んで形を整える。長く伸びる茎を頻繁に切る必要もあり、栽培に手間がかかる。

5ミリほどの厚さに切ってソテーするのもおすすめだ。ほくほくとした食感で、軽く塩こしょうを振れば手ごろな酒のおつまみにもなる。毛馬キュウリは道の駅などで販売している。「とにかく一度食べてみて」と松尾さんは話す。

(大阪経済部 出村政彬)

=2018年6月13日掲載

タマネギ(兵庫県淡路島)

甘さと軟らかさ際だつ

淡路島を車で走っていると、緑色の長い葉が倒れた田畑にいくつも出くわす。葉の栄養が行き渡り、収穫時期が近い兆候を示すタマネギ畑だ。タマネギは淡路島の特産品だ。

春に収穫する「早生(わせ)」は葉が約7枚と少ないが、水分が多い。生食でもみずみずしくさわやかな風味を楽しめる。初夏の「中生(なかて)」は葉が約8枚。熱をかけると甘くなり、小ぶりの玉を丸ごとカレーに入れるとおいしい。

淡路島産タマネギのおいしさは数字でも表れる。糖の含有率は10%前後と他産地と比べると1~2ポイント高い。低いほど軟らかいことを示す「破断応力」も600グラム前後と他産地の6割にとどまる。

この特徴を育むのが、温暖で降水量が少ない気候だ。風で飛んでくる海のミネラルも関係しているとされ「海水をかけて育てる農家もいる」(JAあわじ島の柏木賢治営農部長)。淡路島タマネギは島内の直売所や道の駅で加工食品を含め購入できる。これからの季節のお薦めは「タマネギを使うハモすき」(柏木氏)という。

(大阪経済部 中谷庄吾)

=2018年6月6日付掲載

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