日本初の「投機級」社債 アイフルが公募
格付けが低く「投機的等級」に分類される公募社債が初めて日本で発行される。消費者金融大手のアイフルが5月下旬以降に発行する。低格付け債の市場が生まれれば、信用力の低い企業の資金調達手段が広がる。比較的高い利回りを得られるため機関投資家の期待も高い。ただ、極めて緩和的な金融環境が生んだ側面でもある。
格付けを重視する投資家が多い日本では、公募での低格付け債の発行実績がない特殊な状況が長く続いていた。
格付けが「ダブルB」格以下の企業が発行する低格付け債は「高利回り債(ハイイールド債)」とも呼ばれる。1970年代に発行が始まった米国での発行残高は2兆ドル(約220兆円)規模にのぼり、独立した投資対象とみなされている。
低格付け債の発行が可能になった背景の1つに各国中銀の金融緩和の長期化がある。国債や高格付け社債で十分な利回りを確保できない機関投資家は、多少リスクを負っても高い利回りを求める。結果、国債に対する社債の上乗せ金利(スプレッド)は縮小している。
投資家が注目するのが低格付け債だ。世界最大の機関投資家、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も低格付け債に投資できる体制を整えた。
アイフルは今回、期間1年半の債券発行を準備しており、5月下旬にも金利などの条件を決める。野村証券を主幹事に指名した。格付投資情報センター(R&I)が付与するアイフルの格付けはダブルBマイナスだ。アイフルは「調達の多様化を進めており、社債発行もその一環」とコメントした。
2007年に最後の公募社債を発行したアイフルは09年に事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)制度を申請し、社債市場から退場した。だが昨年、私募社債を計200億円発行した際に多くの需要が集まったため、社債市場に復帰する。
低格付け債の発行が可能になると、企業の資金調達手段が多様化する。アイフルのような「復活組」も成長資金を調達できる。財務状況が一時的に悪化した企業も、社債市場からの資金調達ができれば急場をしのげる。
もっとも、実際に景気減速が鮮明になれば低格付け債からマネーが流出するリスクは大きい。今回のアイフル債は債券市場のリスク許容度を測る試金石となる。