残る疑念、米与野党応酬 予算案など論議停滞も
共和「疑惑はゼロ」強調 民主強硬「議会証言を」

2019/4/19 19:53
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【ワシントン=河浪武史】米司法省が18日公表した「ロシア疑惑」の捜査報告書では、トランプ政権のロシアとの共謀を否定しつつ、トランプ大統領の捜査妨害には疑念を残した。野党・民主党は次期大統領選を見据えて「不正行為があった」と追及を続けるが、与党・共和党は「疑惑はゼロ。民主は嫌がらせをやめるべきだ」と反転攻勢に出る。議会は泥仕合の様相を強めており、予算案などの政策論議の停滞は避けられない。

首都ワシントンの米議会=ロイター

首都ワシントンの米議会=ロイター

「完全版の捜査報告書と根底にある証拠が必要だ」。下院司法委員会のナドラー委員長(民主)は19日、黒塗りではない報告書の提出を命じた。

民主党のシューマー上院院内総務は報告書公表を受けて18日記者会見し「バー司法長官はトランプ陣営の報道官なのか」とバー氏をすかさず批判した。モラー特別検察官はトランプ氏の捜査妨害疑惑を指摘したものの、バー氏は「証拠不十分だ」と断じた。民主重鎮のペロシ下院議長も「特別検察官の議会証言が早急に必要だ」と幕引きを急ぐトランプ政権に抵抗する。

ただ、2020年の大統領選を前に民主党が視野に入れていたトランプ氏の弾劾はハードルが格段に上がった。ナドラー氏は18日に「(弾劾の)可能性はある」と答えたが、仮に民主党が多数を占める下院で訴追できたとしても、共和党が主導する上院で「有罪」と判断を下す可能性は現時点でほとんどなくなった。

「議会はトランプ氏の調査を続けるべきだ」。民主党から大統領選に立候補しているバーニー・サンダース上院議員(無所属)は18日、改めてそう主張した。トランプ氏にはロシア疑惑だけでなく、税逃れ疑惑や不倫もみ消し疑惑など追及の材料が残る。ただ、いずれもトランプ氏の致命傷になるとはいいにくく、民主党は20年の選挙へ戦略の練り直しが欠かせない。

「トランプ離れ」の兆しがあった共和党は、一転して結束が強まりそうだ。

共和党の上院トップ、マコネル院内総務は18日、「議会と米国民に対し捜査報告書を可能な限り公表する司法長官の熱心な働きに感謝する」とバー氏を評価する声明を出した。同党のスティーブ・スカリス下院院内幹事は同日、「疑惑はゼロだ。民主党は大統領とその家族への嫌がらせをやめるべきだ」と強く野党を批判する声明を出した。共和党は3月中旬に「国境の壁」を巡るトランプ氏の非常事態宣言を巡り、上院で12人もの造反者が出たばかりだった。

ロシア疑惑という最大のヤマ場を越えて、トランプ氏の支持率が上向く可能性もある。政治専門紙「ポリティコ」などの4月12~14日の調査では同氏の支持率が44%と前週から4ポイントも高まった。一時急落した株価が再上昇するなど経済不安が薄れたことも追い風だ。

「米連邦捜査局(FBI)は16年の大統領選でトランプ陣営にスパイ活動を仕掛けていた」。バー氏はFBIが以前からトランプ氏の大統領選当選を阻止しようと動いていたと指摘し、ロシア疑惑の捜査過程を逆に調査すると主張する。

上下両院で多数派が異なる「ねじれ」状態の米議会は、与野党対立が深まるが、政策課題は山積みだ。

一つはトランプ政権が16年の選挙で公約の柱とした北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉だ。18年に新たに結んだ「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」はトランプ氏の手柄となるだけに、民主党指導部が反対して議会の批准のメドがたたない。サプライチェーン(供給網)に大きな影響がある自動車産業はUSMCAの行方を注視するが、議会の作業は次期大統領選後にずれ込むとの見方まである。

20会計年度(19年10月~20年9月)の予算審議も大幅に遅れそうだ。3月には国の借入限度額を定めた「債務上限」が復活し、米連邦政府は自由に国債発行ができなくなった。米財務省の特例措置で9月までは資金を確保できそうだが、議会が早期に上限を引き上げなければ米国債の債務不履行(デフォルト)を引き起こすリスクすらある。

トランプ政権を揺さぶってきたロシア疑惑は、捜査妨害を巡って完全にシロとは言い切れない結果となり、その最終判断は有権者に委ねられたといえる。ただ、政権や議会の不毛な争いが続けば政治不信と経済不安がともに高まり、共和、民主両党とも支持者の離反を招きかねない。

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