2019年6月26日(水)

「トランプ氏、無罪放免せず」 捜査報告要旨

トランプ政権
北米
2019/4/19 5:20 (2019/4/19 7:02更新)
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2016年の米大統領選にロシアが介入した疑惑を巡り、バー司法長官は18日、モラー特別検察官の捜査報告書を公表した。主な論点と報告書の要旨は以下の通り

モラー氏の報告書は、進行中の捜査情報など一部が黒塗りにされた=AP

モラー氏の報告書は、進行中の捜査情報など一部が黒塗りにされた=AP

■トランプ氏陣営とロシア側との接触

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使ったキャンペーンとロシア軍参謀本部情報総局(GRU)によるハッキング活動は、トランプ氏側とロシア政府に近い人物たちの間の一連のやりとりと同時並行で行われた。トランプ氏の選挙戦陣営はロシア側による情報収集や公開が自陣営にとって有益と期待していたが、今回の報告書は両者が共謀していたと立証しなかった。

ビジネス上のつながりで生まれたロシア人脈は選挙戦の支援や、プーチン大統領とトランプ氏の会談を提案した。さらにトランプ側とロシア政府代表者を会合に招待したり、(トランプ氏側の)政治的な姿勢が、米国とロシアの関係改善を目指すものになるよう働きかけたりした。

16年春にはトランプ陣営の外交顧問ジョージ・パパドプロス氏が、ロシア政府とつながりのある人物から、同政府が、(大統領選で争っている民主党の)ヒラリー・クリントン氏に「泥を塗る」数千通のメールを入手したと聞いた。パパドプロス氏はある国の外交官にロシア政府がトランプ陣営の選挙戦を支援する可能性があると漏らした。ある外国政府が米連邦捜査局(FBI)にこのやりとりを通報し、FBIは捜査を始めた。

トランプタワーでロシア人弁護士と面会

16年6月、あるロシア人弁護士は(トランプ氏の長男である)ドナルド・トランプ・ジュニア氏や(娘婿の)クシュナー氏、選対本部長のポール・マナフォート氏ら選挙戦幹部と会った。やりとりによれば、トランプ陣営はロシアから得られる情報によって選挙戦で有利になると予想していた。ただしロシア人弁護士からそのような情報は提供されなかった。

大統領は広報担当者のヒックス氏らに17年6月29日~7月9日で最低3回、16年6月9日のロシア人との面会を公表しないように指示した。6月29日、ヒックス氏は大統領に面会を調整するメールが「とても悪い」内容で、知れ渡れば大規模になると警告したが大統領はヒックス氏と娘婿のクシュナー氏に「放っておけ」と指示した。

7月8日、(ヒックス氏が大統領に)ニューヨーク・タイムズ紙が面会を報じようとしていると伝えると、コメントしないように指示した。(トランプ氏の長男である)ジュニア氏が書いた面会の説明については、選挙に有利な情報をくれる人と面会したことを認めたと思われないよう、大統領が書き直しを命じた。

■ウィキリークスによる情報流出に期待

報告書はロシア政府が2種類の手口で16年の米大統領選に全面的かつ組織的に介入した詳細を明らかにした。モラー特別検察官の捜査は、ロシア政府はそのような介入がトランプ政権になった場合、ロシア側に有利に働くことを認識しつつ、その結果を確実にするために活動したことを立証した。また、トランプ大統領の選挙陣営とロシア政府の間にあった多くのつながりを特定した。

トランプ陣営もロシアによる選挙介入の活動が自らの有利に働くと期待していた。ただ、同捜査はトランプ選挙陣営のメンバーがロシアの選挙介入に共謀したり、連携したりしたと立証できなかった。

ジュリアン・アサンジ氏率いるウィキリークスは、ロシア軍参謀本部情報総局が運営する情報サイトから、ロシアがクリントン陣営のコンピューターや電子メールをハッキングして不正入手した情報の共有や、公表タイミングで協力することについて打診されていた。

トランプの選挙陣営がウィキリークスの握るクリントン陣営の情報に関心を寄せていたことや、選挙メンバーが情報の漏洩を予測したり、選挙で有利に働く効果に期待を見せたりする発言もあった。また、ジュニア氏は選挙期間中に電子メールで直接ウィキリークスとやりとりしており、クリントン陣営から盗まれた情報を載せたサイトへのリンクをメールで受け取っていた。

■捜査妨害についてのモラー氏の結論

伝統的な検察判断を下さないということを決めていたので、大統領の行為について究極的な結論を下さなかった。大統領の行動と意図についての証拠は、検察判断を下すためには複雑な問題を解決する必要があった。

詳細な捜査をした上で、大統領が全く司法妨害をしていないと自信を持っていえたなら、そう言及したであろう。事実と、適用できる法的な基準に基づいて、その判断を下すことができなかった。この調査報告書は大統領は犯罪をおかしたとは結論づけていないが、一方で完全に無罪放免としたわけではない。

■コミーFBI前長官の解任について

17年5月3日、コミーFBI長官は議会証言したが、この際にトランプ大統領が個人的に(ロシア疑惑関連で)捜査対象となっているかどうかの質問に対する回答を拒否した。この後数日で大統領はコミー氏の解任を決めた。

大統領は自身が捜査対象になっていないとコミー氏が伝えてきたことを、解任を公表する書簡に盛り込むよう強要した。解任当日、ホワイトハウスはコミー氏の解任について、同氏が主導したヒラリー・クリントン元国務長官の私用メール問題をめぐる捜査の過失責任をとるべきだという司法省の勧告がきっかけとの立場をとった。

しかし大統領は司法省からヒアリングをする前にコミー氏の解任を決めていた。解任翌日に大統領はロシア高官に「ロシアのせいでひどいプレッシャーを受けていた」が、コミー氏の解任で「取り除かれた」と話した。

その翌日、こんどはテレビのインタビューで司法省の勧告にかかわらず自分はコミーを解任するつもりであったと回答。「トランプとロシア(の関係)は作り話だ」として「とにかく(解任を)するだけと決めた」と言った。

ロシア疑惑捜査についてコミー氏を怒っているか、との質問に対しては「私は(ロシア疑惑捜査)物事はきっちりと行われるべきだと考えている」と応じ、コミー氏を解任したことで「捜査は長びくかもしれない」(ので私は怒っていない)と付け加えた。

■モラー氏に対する解任提案について

17年6月17日、(モラー氏がトランプ大統領が司法妨害をしたか捜査しているとの報道が出た後に)トランプ氏はドナルド・マクガーン元ホワイトハウス法律顧問の自宅に2度電話した。マクガーン氏に対し、当時のロッド・ローゼンスタイン司法副長官に「モラーは利害衝突をしており、解任されなければならない」と言うように指示した。

マクガーン氏は大統領の命令に従う気持ちはないが、どう大統領に答えるかもわからず、わなに陥ったように感じたという。この後辞任するしかないと決断した。

■トランプ大統領によるモラー氏への書面回答について

トランプ大統領との一連の協議の中で、大統領はロシア関連の質問に書面で回答することに合意し、それを我々に提出した。捜査妨害や大統領就任後の出来事に関する質問への書面回答提出には合意しなかった。

書面回答は18年11月に我々に提出された。その内容は、トランプタワーでのジュニア氏らのミーティングから始まって、大統領選期間中や大統領就任後のロシア関係者との接触などについての質問に答えた。ただ、その書面には30カ所に渡って「記憶していない」あるいは「覚えていない」という記述があり、情報が不十分だった。このため大統領への面会を通じた聞き取りを依頼したが、大統領はこれを拒否した。

■トランプ大統領の召還見送りの理由について

我々には大陪審を通じて大統領の証人喚問を命じる法的権限があると判断したが、最終的には召喚は見送ることに決めた。捜査の最終段階でそうした召喚をするのは捜査終了を極めて遅らせることになるとみたからだ。また、大統領のそれまでの行動や公的・私的な発言に基づいた豊富な証拠をもとに、召喚をしなくても事実関係を精査できると判断した。

■モラー氏任命時のトランプ氏の反応

17年5月17日、モラー特別検察官が任命された。当時の司法長官セッションズ氏管轄のハント首席補佐官の手記によると、ホワイトハウスで知らせを受けたトランプ大統領は、椅子に背中を沈めて「これはひどいことになった。大統領職の終わりだ。完全にへまをやらかした」とひどく憤慨。セッションズ司法長官がこの捜査を辞退したことを厳しくとがめた。

セッションズ氏は「司法長官は私が任命した最も重要な職だ。(司法長官として)君は私を守るはずじゃなかったか」と大統領が憤ったことと記憶している。さらに「特別検察官の捜査の対象になったら大統領生命が絶たれると皆が言っている。汚名を返上するまでに何年もかかるだろう。これは最悪の事態だ」と大統領は嘆いた。

(米州総局)

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