スキマ時間で手軽に仕事 19歳社長の新興企業が提供

2019/4/19 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

特定の組織や時間に縛られずに働きたい。こんな思いを実現するツールを提供するのがWakrak(ワクラク、東京・港)だ。1日単位の仕事を探せるアプリを運営。定職に就いていない若者や主婦らの注目を集め、サービス開始から1年で利用者数は5万人を突破した。社長の谷口怜央氏は19歳。「日本人の余裕のない働き方を変えたい」と意気込む。

谷口社長は「会社に所属して働く以外の選択肢を提供したい」と話す

谷口社長は「会社に所属して働く以外の選択肢を提供したい」と話す

「スキマ時間を使って手軽に仕事を見つけられる。色々な場所で働き、様々な人に会えるのが楽しい」。神奈川県に住む主婦の美代子さん(44)はスマートフォン(スマホ)アプリ「ワクラク」を使って社会復帰を果たした利用者の1人だ。

■1日に3~5時間勤務

以前は会社員として働いていたこともあるが、結婚を機に24歳で退職。専業主婦として家事や育児に専念してきた。だが、高校3年生の息子が大学受験を控え、進学費用などを工面するため、約20年ぶりに働くことにした。ただ長らく仕事から遠ざかっていたため、不安もあった。子どももいるので「週2回ぐらい働けたら」と考えていたが、企業の採用面接に行くのは気が進まなかった。

そんな時、2018年11月にネットでワクラクのアプリを見つけた。テレホンアポインターや飲食店のランチ接客、東京タワーのイベントスタッフなどこれまでに約40カ所で1日単位のアルバイトとして働いた。午前10時~午後3時の間で3~5時間働くことが多く、月に4万円ほどを稼ぐ。

「何の技能もない私が働けたのはワクラクのおかげ」と美代子さんは言う。家は家事や育児をやっても誰にも感謝されないが、アルバイト先では優しい従業員が多く、「仕事が終わったときにありがとうと言われるのがうれしい。しばらくは働き続けたい」と話す。

「ワクラク」の利用者は美代子さんのような主婦や学生、フリーターが多い。人気の理由は手軽さだ。利用者は居酒屋での皿洗いなど多様な仕事の中から、働ける仕事と日にちを選ぶとアプリ内で雇用契約書を発行。当日職場に行くだけでよく、履歴書や面接の準備をする必要はない。

世の中には職業紹介や派遣、業務委託など様々な働き方がある。最近ではネットを通じて個人に仕事を受発注するクラウドソーシングも普及しているが、スキルのある人を対象としていることが多い。「あした、たまたま時間ができたので、ちょっと働きたい」。学生や主婦らのそんなニーズに応えるサービスは少なかった。

ワクラクのアプリ画面では日付や分類から仕事を探せる

ワクラクのアプリ画面では日付や分類から仕事を探せる

ワクラクは17年12月にサービスを開始し、個人の登録者数は5万人を超える。人手不足を背景に利用する企業は飲食店が半分以上を占めるが、最近では物流会社やIT(情報技術)企業などに業種が広がっている。

■高1の夏に感じた疑問

「日本人はなぜこんなに冷たくあくせくしているのか?」。谷口社長がワクラクを開発したのは、高校1年の夏にアフリカのセネガルを訪れて、日本の社会に疑問を感じたことがきっかけだ。

単身で、言葉も分からない中、1カ月過ごした。「アフリカの一般の人々の生活は日本ほど豊かではないが、ゆっくり時間が流れており、働かなくても助け合いながら暮らしている」と感じた。帰国後、様々なホームレスや経営者に話を聞くうちにITビジネスで「日本の現状を変えられるのでは」と思った。

高2の秋に高校を休学。飲食店向け決済サービスを手がけるスタートアップで半年間、インターンとして働いた後、17年6月、ワクラクの前身となるSpacelookを設立した。社会を変える手法として、仕事に着目したのは「1日の中で最も長い時間を使っているのが仕事。好きなときに自由に働けるアプリがあれば、世の中を変える人を増やせる」と考えたからだ。

18年11月にはベンチャーキャピタル(VC)から1億円の資金を調達。20代後半から30代前半の社会経験を持つ社員も入社しており、若い社長を支える。谷口氏は主に戦略を立て、営業や顧客サポートは社員に任せる。「自分が成長することによって組織が成長することをめざす」という。

課題は収益性の向上だ。同社は企業と働き手のマッチングが成立した際に報酬の10%を手数料として受け取る。ただ現在は人件費やマーケティング費用がかさんでおり、損益は赤字。現在は首都圏が中心だが、今後は大阪や愛知、北海道にも進出し、19年末には月間のマッチング数を10万件に引き上げる計画だ。

谷口社長は「配送や物流業は特に人手不足が深刻化しており、広告費をかけても人が集まらなくなっている」とみる。ワクラクのアプリ普及を通じて「会社に所属して働くのに加えて好きなときにいつでも働けるという選択肢をつくっていきたい」という。ひとつの会社・組織で働き続け、そこから漏れ落ちる者を有効活用できない。日本の構造問題に、若き経営トップがしなやかに挑む。

(企業報道部 鈴木健二朗)

[日経産業新聞4月10日付]

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