オケに乗り 響く歌声 大阪4楽団に専属合唱団(もっと関西)
カルチャー
大阪のオーケストラ専属合唱団が活気づいている。4つの楽団がレパートリーを広げるべく合唱付き曲に積極的に取り組んでいるためだ。いずれもアマチュアながら厳しいオーディションを経て研さんを積み、合唱団の独自公演を開く例も目立つ。

「ファーストクラスの合唱だった」。3月、大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会の舞台袖。世界的指揮者、レナード・スラットキンは大阪フィルハーモニー合唱団に賛辞を贈った。歌ったのはレナード・バーンスタインの「チチェスター詩篇」。実演機会が少なく、ヘブライ語の歌詞と変拍子が難しい作品を乗り切った。
欧州で独自公演
近年、同合唱団は評価を高めており、昨年9月にはドイツのトーマス教会で初の海外公演を開いた。バッハが後半生を過ごし、多くの曲を書いた同教会で、彼の「ミサ曲 ロ短調」を披露。録音を3月、CDとして発売した。2015年から合唱指揮を務める福島章恭は「西洋のスタンダードを目指し指導しており、響きが良くなっている」と胸を張る。足の指を広げると呼吸が深くなるといい、サンダル履きで練習するなどユニークな手法も効果を上げているようだ。

今年は大阪フィル音楽監督・尾高忠明の指揮で、ブラームスの全交響曲演奏会の舞台に上がる。交響曲4曲に、協奏曲を組み合わせるのが一般的なプログラムだ。しかし尾高が同合唱団の実力を評価し、合唱付き曲を一緒に演奏することにした。初回の5月11日、合唱団は「埋葬の歌」を歌う。尾高ががん治療のため2カ月の活動休止期間に入る直前。「皆で勇気を与える演奏会にしたい」(福島)と意欲を燃やす。

「『フロイデ』の『O』を鳴らそうと思って下さい」。4月上旬、堺市内のスタジオを訪れると、大阪交響楽団ミュージック・アドバイザーの外山雄三が檄(げき)を飛ばしていた。専属の大阪響コーラスは昨年9月に男声、今年1月に女声がそれぞれデビュー。5月10日の定期演奏会で混声として初舞台を踏む。歌うのはベートーベンの「第九」。この日、88歳の米寿を迎える外山が自らを祝う。
事業でメリット
同楽団には十数年前まで専属合唱団があったが、団員の高齢化で演奏の質が保てず解散した。楽団の赤穂正秀事務局長は再結成について「楽団の音楽を高める意味のほか、事業面でもメリットがある」と明かす。アマチュアの合唱愛好家同士は結束が強く、口コミによるチケット販売の増加が期待できるという。赤穂事務局長は「合唱団はオケに一番近いファン。一緒にレベルを高め合いたい」と話す。
同コーラスは今後、年1回ほど楽団主催公演に出演する予定。毎回オーディションで舞台に上がるメンバーを選抜する。合唱指導にあたる中村貴志は「細かい注文に対応できるメンバーが集まっている。レベルの高いものができるのでは」と自信をみせる。
日本センチュリー交響楽団専属の日本センチュリー合唱団も新たにオーディションを開き、名称も1月に「大阪センチュリー」から改めた。メンバーの村上昌子運営委員長は「オケの音の中で歌えるのは幸せなこと。気持ちを新たに練習に取り組む」と意気込む。
10月の定期で歌うのがブラームス「ドイツ・レクイエム」。公演前にさらにメンバーを選抜し、演奏の質を高める。合唱団独自のコンサートも9月に開き、同じ曲をピアノ伴奏で歌う。
関西フィルハーモニー管弦楽団専属の関西フィルハーモニー合唱団も13年発足と新しい。合唱付き曲のレパートリーを広げるため、桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎が創設を希望したという。設立以来、年1回のペースで定期演奏会の舞台に立ち、合唱団独自公演も年1回開く。今年は7月に飯守の指揮で、メンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」の舞台に立つ。
プロや音大の合唱団が多い東京では、専属合唱団を持つ楽団は実は少ない。同合唱団を指導するテノールの畑儀文は「大阪の4楽団に合唱団が出そろった。楽団の活動が活性化し、力が高まるのでは」と話す。合唱団が大阪のオケ独自の大きな活力源となっている。
(大阪・文化担当 西原幹喜)

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