2019年5月21日(火)

名古屋城天守閣、木造復元に暗雲 解体申請も許可厳しく

中部
2019/4/19 14:18
保存
共有
印刷
その他

名古屋市が目指す名古屋城天守閣の木造復元計画に暗雲が漂っている。復元に先立ってコンクリート製の現天守閣の解体許可を4月中にも文化庁に申請する方針だが、3月下旬に開いた有識者会議で解体時の石垣保全策などへの批判が相次いだためだ。5月の文化審議会で許可が得られる可能性は低く、目標とする2022年末の復元完成へ見通しは暗い。

名古屋城は天守閣の木造復元を目指す(名古屋市中区)

「解体時に石垣に傷をつけないための対策が足りない」「工事の足場を組むお堀の地下の埋蔵文化財調査も不十分」。3月25日に市内で開かれた有識者会議「石垣部会」で市側が天守閣の解体工法と石垣の保全策を説明すると、委員から矢継ぎ早に厳しい声が飛んだ。

名古屋城は国の特別史跡で、工事で現状を変更するには文化庁の許可が必要だ。市は2月、天守閣の解体許可を先に申請し、木造復元の許可は後回しにする方針を同庁に伝えた。同庁は、江戸時代から残り価値があるとされる石垣にダメージを与えない解体方法を検討した上で、石垣部会の意見を添えて申請するよう市に求めている。

石垣部会で市は、周囲のお堀に足場を組み、天守閣を切断してクレーンでつり上げる工法を示して「石垣への影響は軽微」と説明したが、委員からは「机上の空論で、根本的に計画をまとめ直すべきだ」との批判が絶えなかった。

市は22年末完成の工期に間に合わせるため、5月の文化審で解体許可を得て、今夏から準備を進めて秋にも工事を始めたい考え。同部会の了承がなくても制度上は文化庁への申請は可能なため、市は月内に強行する構えだ。

ただ、部会のある委員は「申請するかどうかは市の考え次第だが、埋蔵文化財の調査が不十分であることなどを踏まえると、文化庁がどう判断するかは推測できる」とし、許可は下りないとの見通しをにじませる。

文化審の審査は例年5月と10月の年2回しかなく、許可が得られなければ、木造復元のスケジュールは大幅に遅れ、抜本的な見直しを迫られる。市幹部は「震度6以上の地震で倒壊する危険性が高いと診断されており、老朽化している天守閣を放置できないことを説明して理解を得たい」と話すが、先行きは厳しい。

河村たかし市長は「(解体申請が)認められなければ関係者全員で切腹。それくらいの覚悟で臨む」と力説するが、市幹部は「22年末の完成目標の見直しは避けられないだろう」としている。

名古屋城 江戸幕府を開いた徳川家康の命令で1610年に築城が始まり、天守閣は2年後に完成。御三家筆頭、尾張徳川家の居城として栄えた。天守閣の屋根に輝くシャチホコは純度の高い金を使ったのが特徴で、徳川家の財力を象徴するひとつだった。昭和初期に国宝に指定された後は一般公開され、名古屋市のシンボルとして市民に親しまれてきた。
 太平洋戦争の空襲で天守閣は本丸御殿とともに焼失。その後、市民の寄付などによって1959年にコンクリート製の現天守閣が再建されたが、耐震性の問題などで現在は入場を中止している。木造だったころの実測図や写真が残っており、河村たかし市長は「史実に忠実な復元」を目指している。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報