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揺らぐ金メダリストたち 連覇の重圧、自分との闘い

2019/4/18 16:10
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4年前の五輪金メダリストだけが踏みしめる、2020年東京五輪への苦難の道がある。自国開催ゆえの重圧、選考過程の変化。もはや息抜きは許されず、連覇へ挑む現王者にはモチベーションの壁が立ちはだかる。

萩野公介は「今は競技に正面から向き合う気持ちになれない」と日本選手権を欠場=共同

萩野公介は「今は競技に正面から向き合う気持ちになれない」と日本選手権を欠場=共同

「競技に正面から向き合える気持ちでないことを受け入れ、決断に至りました」。リオデジャネイロ五輪競泳男子400メートル個人メドレー金メダリストの萩野公介(ブリヂストン)は悩める心情をコメントで吐露し、4月の日本選手権を欠場した。リオ五輪後は不振の影を拭えずにいた萩野の異変が隠せなくなったのは年明け。2月のコナミオープンの予選で自身の持つ日本記録から17秒以上遅れ、以降のレースを棄権した。

平井伯昌日本代表監督は「金メダリストにしか分からぬ苦しみもある」と気遣いつつ、「期待されているからとか、どこか義務感で泳いでいる」。目的意識が揺らいでいると恩師の目には映る。

「競技への動機づけのうち、金メダルや他人からの称賛など外発的なものは獲得してしまうと継続が難しい」と語るのはゴルファーの心理支援に携わる大阪体育大の菅生貴之教授(スポーツ心理学)。「大きな視点で競技をとらえ、取り組む意味などを考えてみることも必要では」と指摘する。

4年を隔てる五輪から五輪までの時間を、無敵のまま駆け抜けられる王者は少数派でしかない。08年北京五輪の競泳平泳ぎで2大会連続2冠を果たした北島康介も、04年アテネ五輪直後の2年間は戦意の低下を隠せず、ライバルの後じんを拝した。柔道3連覇の野村忠宏も00年シドニー五輪後は2年間の休養を挟んだ。柔道人生で世界選手権の優勝は一度きり。

今の時代、自国で開催する五輪の顔として注目される金メダリストに小休止は許されない。代表選考は早期化し、ランキング制など成績の連綿たる積み重ねが重視され、追い打ちをかけられる。

典型が柔道界だ。全日本柔道連盟は選考の透明性を高めるため、14年から参考指標として成績に応じた国内ポイント制を導入した。インターバルのはずの期間も大会で結果を求められ、五輪へ敷かれたこのレールから降りることは難しい。ある幹部は「金メダリストには気の毒」と同情する。

大野将平は「自分にしかできない柔道」を新たな目標に連覇に挑む

大野将平は「自分にしかできない柔道」を新たな目標に連覇に挑む

73キロ級覇者の大野将平(旭化成)はリスクを承知で、天理大大学院の勉強を理由に1年以上、事実上試合から離れた。昨年は世界選手権代表から漏れ、アジア大会で「ここで引いてしまえば東京五輪に道はなくなるという心で臨んだ」という決死の綱渡りではあった。

連覇だけを考えれば、別の道があったはず。だが大野は競技を続ける意義を「どういう柔道を畳の上で表現できるか」に見いだす。「勝てば完成でもないし、負けても目指していたものと思えるかもしれない。勝ち負けに一喜一憂せず、自分の物差しで測りたい」と本番の来年を見据える。

女子レスリングの伊調馨(ALSOK)もほぼ2年、試合から距離を置いた。五輪5連覇という難行が待つレスリングへの熱意を再確認でき、「喜びをかみしめながら」打ち込めているという。

頂は、登り詰めてからがもっと、難しい。そんな受難と折り合うすべを、金メダリストたちはそれぞれに探っている。(西堀卓司)

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