2019年6月19日(水)

リアル巻き込むビジネスアプリの争い MSが電子黒板開発

ネット・IT
エレクトロニクス
北米
2019/4/18 11:57
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【ニューヨーク=佐藤浩実】米マイクロソフトは17日、米オフィス家具大手と組んで50インチの電子黒板を6月に発売すると発表した。電子黒板の販売を通じて、ビデオ会議や資料共有といった自社サービスの利用を促す。仕事で使うビジネスアプリは、2019年に上場が相次ぐユニコーン企業の攻勢がめざましい分野。オフィスの老舗は「リアル」を巻き込んで対抗する。

マイクロソフトは職場でビデオ会議などに使う「サーフェスハブ2S」を6月に発売すると発表した(米ニューヨークでの発表会)

マイクロソフトが6月に発売する「サーフェスハブ2S」はビデオ会議など自社アプリを使いやすくした(米ニューヨークでの発表会)

米ニューヨークにある家具大手スチールケースの展示場。17日、同社とマイクロソフトは共同開発を進めてきた「サーフェスハブ2S」(8999ドル=約100万円)を報道陣に披露した。タッチ操作ができる50インチの大きなモニターが付いた電子黒板で、スチールケース製の車輪付きスタンドと組み合わせると、会議の場所や人数に応じて簡単に動かせる。米国で6月から、日本などでも19年後半に販売を始める。

スチールケースはオフィスの空間設計から家具の販売までを手がける企業だ。ジェームス・キーン最高経営責任者(CEO)は「新しいアイデアを生み出すために(企業や部門間の)協業を促すオフィスづくりへの関心が高まっている」と話す。電子黒板を取り入れた職場のレイアウトを顧客に提案する。

家具大手と組むことで、マイクロソフトはサーフェスの販売機会を広げられる。ただ、本当の狙いは電子黒板を超えた部分にある。

発表会のさなか、新しい電子黒板の使用例を示す実演で頻繁に出てきたのがマイクロソフトがクラウド経由で提供する企業向けアプリ「チームス」だった。機能のひとつであるビデオ会議を試すと、人物が実物大で表示され、臨場感がある。モニターに表示された資料に、それぞれが持つスマートフォン(スマホ)やタブレット端末から意見を書き加える実演もあった。

マイクロソフトによると、チームスは17年のサービス開始から約2年で採用企業を50万社まで増やした。ただ企業が導入しても、部署や人によってはほとんど利用していない場合もあった。「もっとアプリを使ってもらうために端末はどうあるべきか。チームスの開発部隊と議論を重ねてきた」と、サーフェス担当のコーポレート副社長、パノス・パネイ氏は明かす。

もっとも、ビジネスアプリはマイクロソフトのような老舗よりも新興勢の躍進がめざましい。例えば、18日に米ナスダックに上場する11年設立の米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ。リンクをクリックするだけで会議に参加できる手軽さや、音・画質の良さで採用先を広げ、19年1月期の売上高は3億3051万ドルと前の期と比べて2.2倍に伸びた。いまやズーム社のサービスを使って行われる会議の時間は、ひと月あたり50億分を超えるという。

赤字企業の株式上場が目立つ今年のIPO(新規株式公開)のなかで、最終利益が758万ドル(19年1月期)とすでに利益を確保している点も評価されている。企業価値はおよそ92億ドルの見込みだ。

チームスの競合では、ビジネス対話アプリを手掛けるスラック・テクノロジーズも上場を計画。スラックの1日あたりの世界の利用者数は1月末時点で1000万人を超える。

ビジネスアプリを中心にスタートアップ企業に出資する投資家の一人は「大手企業では目が行き届かない点まで、きめ細かく改善するため、業種やサービスごとに複数の企業が育つ有望分野だ」と指摘する。

ズーム社のエリック・ユアンCEOが起業したのも、かつて勤めていたシスコシステムズの会議サービスの音質や画質が顧客の求める水準に達しておらず、事業の伸びしろがあると感じたためだ。老舗のマイクロソフトから見れば、気を抜いていると新興企業に顧客を奪われかねないともいえる。

日本の働き方改革も含め、在宅勤務への対応や社内外の協業促進のビジネスアプリの利用者は今後も世界中で増える見通しだ。調査会社マーケッツ&マーケッツは、ビデオ会議だけでも18年に135億ドルだった市場規模が23年に198億ドルになり、年率8%近い成長が続くと予想する。職場を取り込む新旧のIT(情報技術)企業の争いもいっそう激しくなる。

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