2019年5月20日(月)

ネットフリックス、強気の拡大戦略に死角

エレクトロニクス
北米
2019/4/17 23:00
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米ネットフリックスが成長の岐路に立たされている。16日に発表した2019年1~3月期の有料契約者の増加数は過去最高を更新したが、4~6月期は一転して成長にブレーキがかかる見通しだ。アップルやウォルト・ディズニーの新規参入も今後の懸念材料だ。利益よりも会員獲得に向けた投資を優先する戦略でライバルを突き放しにかかるが、強気の拡大戦略には危うさも見えてきた。

米国で動画配信の競争は激化している(米ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEO、3月)

ネットフリックスの1~3月期の売上高は前年同期比22%増の45億ドル(約5000億円)。フリーキャッシュフロー(純現金収支)は4億6000万ドルの赤字。2億8700万ドルの赤字だった前年同期より悪化した。

ネットフリックスは資金をコンテンツへの投資に回して、会員獲得を優先させる成長戦略を採ってきた。アカデミー賞を受賞した「ROMA/ローマ」など独自作品が高い評価を受け、日本でもアニメ「ULTRAMAN」を配信。18年のコンテンツ制作・調達費用は85億ドルにのぼる。19年は「さらに増やす」(グレッグ・ピーターズ最高プロダクト責任者)。

豊富なコンテンツでテレビから視聴者を奪ってきたネットフリックス。米国ではテレビ視聴時間の10%を占めるという。一方で「副作用」として懸念されるのが、多額の負債だ。

同社の有利子負債(長期)は100億ドルを超えた。今後も市場から多額のマネーをかき集めてコンテンツの強化にあてる方針だ。16日に公開した株主宛ての書簡では「現金需要を満たすため、高利回り市場を利用する方針に変更はない」と説明。融資限度枠の範囲で繰り返し借り入れが可能な「リボルビング・クレジット・ファシリティ」の枠を5億ドルから7億5000万ドルに拡大する。

世界的な景気の不透明感を受けて米連邦準備理事会(FRB)が年内の利上げに慎重な姿勢を見せるものの、金利動向次第で業績や株価の重荷となるリスクをはらむ。

インターネットの「プラットフォーマー」にとって、目先の利益を犠牲にして顧客の獲得を優先させるのは定石。巨大なデータを得るためには、より多くの顧客に自社サービスを使ってもらう必要があるからだ。成長投資と負債のバランスをどう取るかは、ネットフリックスに限らず米巨大IT(情報技術)が直面してきた課題だ。

ネットフリックスにとってむしろ喫緊のテーマと言えるのが、本拠を置く米国で始まった他のプラットフォーマーとの戦いだ。

米アップルは3月末、動画配信サービス「アップルTV+(プラス)」を今秋に始めると発表した。スティーブン・スピルバーグ氏ら著名映画監督と組んで独自作品を配信する。米ウォルト・ディズニーも11月に月6.99ドルでの自前の動画配信を開始する。いずれもネットフリックスが築いてきた定額課金の「サブスクリプション」で真っ向勝負を挑む構えだ。

すでに前哨戦は始まっている。ネットフリックスはアップルへの作品提供を拒否。一方、ディズニーも動画配信参入に先駆けてネットフリックスへの配信を打ち切った。

ライバルの参戦に、ネットフリックスは「当社の成長に影響があるとは考えていない」という。テレビからネット配信への視聴者の流入はまだ始まったばかりで、動画配信の先駆者であるネットフリックスでさえ「まだ需要のほんの一部しか満たしていない」と自認するからだ。リード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)は「両社の参入にわくわくしている」と余裕をみせる。

ただ、足元ではすでに利用者の伸びに鈍化の兆しが出てきた。ネットフリックスが16日発表した4~6月期の増加数の予想値は500万人。過去最高だった1~3月期(960万人)から急落し、前年同期と比べても8%減る予想だ。1月に値上げを表明した米国の増加数が30万人にとどまることが響くという。

値上げの影響については「想定の範囲内」と説明するが、ライバルとの競争激化が追い打ちをかける可能性もある。世界に動画配信を広げたネットフリックスだが、強気の拡大戦略はもろ刃の剣とも言えそうだ。

(杉本貴司、篠原英樹、シリコンバレー=中西豊紀)

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