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ウッズVで大盛況 裏にマスターズ委員会の英断
公益財団法人日本ゴルフ協会専務理事 山中博史

(2/2ページ)
2019/4/22 6:30
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2日目は数件のルーリングがあったほか、途中で雷雨の接近で競技が中断しましたが、特に大きなトラブルもなく過ぎました(実は、競技が中断したときはすでにすべての選手が私の担当する2番ホールを通過していたので私にはラッキーでした)。

救済地点は右サイドか左サイドか

問題は3日目に担当した15番ホールで起きました。ある選手が2オンを狙って打ったのですが、球が大きく右にそれてTVカメラ台の脚にくっついて止まったのです。処置自体はそれほど難しくないのですが、問題は救済のニアレストポイントが左右どちらになるかでした。選手が到着する前に測ってみたのですが、僅かに右サイドのほうが近いようでした。ただ右サイドには樹の枝が張り出しており、左サイドは何の障害もなくグリーンが狙える状況でした。

3日目、15番のグリーンに向かって歩く選手たち=ロイター

3日目、15番のグリーンに向かって歩く選手たち=ロイター

TVカメラ台のようなTIOは物によっては両サイドに救済が認められるのですが、このTIOはそれが認められていませんでした。案の定、選手が来て説明しても納得せずに、測る角度がおかしいとか、同距離なのでどちらにも行けるはずだと言って譲りません。私の計測では15センチほど右サイドのほうが近かったのですが……。あまりにもすごい形相でアピールしてくるので、私もセカンドオピニオンを求めることにしました。

やはりこういうときにネイティブに英語を話せない辛さが出てきます。細かいニュアンスがどうしても伝わらず、情けない気持ちになります。結局、セカンドオピニオンも同じ意見で彼もようやく諦めて右サイドにドロップしたのですが、何となく後味の悪いルーリングになってしまいました。選手の名前は……やめておきますね。そして最終日は、球がギャラリー(パトロン)のチェアの上に乗ってしまったという1件だけで平和に終わりました。

まさかのツーウエー決行が大当たり

今回、最も驚いたのは、最終日のスタート方法でした。当初から最終日の天気予報がかなり悪く、午後には大きなストーム(嵐)が来るということでした。最悪の場合は月曜日まで延期かもしれないという話も出て、実際に我々レフェリーにも月曜日まで残れる人の打診があったくらいです。

通常のツアー競技ですと、こういう場合はスタートを早めたり、ツーウエー(アウトとインに分けてスタートさせる)にしたりして対応するのですが、何といってもここは伝統を重んじるマスターズです。例年、コースが最もきれいに見える午後7時にホールアウト設定し、プレーオフや表彰式を暗闇の中で行うこともいといません。ところが、今回は土曜日の午後に早々と最終日は3人1組のツーウエーで行い、午後2時半のホールアウト設定にし、外での表彰式セレモニーも行わないという発表をしたのです。その情報が競技委員回線(無線)で流れて来たときには「まさか!」と思いました。

今年のマスターズはタイガー・ウッズの劇的な復活優勝で大変な盛り上がりを見せた=AP

今年のマスターズはタイガー・ウッズの劇的な復活優勝で大変な盛り上がりを見せた=AP

結果としてこのジャッジが大当たりで、ホールアウトして間もなく雷雲が接近してかなりの雨が降ったのです。伝統や格式を重んじるマスターズですが、今回の臨機応変な対応はみんなが驚いたと思います。午後7時ホールアウトで準備していたテレビ局はさぞかし大変だったと思いますが、日曜日中に大会が終了し、選手や関係者、メディア、観客、私たち競技委員、そして翌週の大会の主催者もホッとしたのは間違いありません。

大会はご存じのようにタイガー・ウッズの劇的な復活優勝で大変な盛り上がりでした。ですが、タイガーの優勝の裏にはこうしたマスターズ委員会の英断があったのではと思います。結果論ですが、もしいつものように2人組で回っていたらタイガーは最終組ではなく、試合展開も違っていたかもしれません。毎年、何かを教えてくれるマスターズは私の永遠の教科書です。

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