2019年5月24日(金)

神戸パンダ、シャンシャンに比べ影薄い…(もっと関西)
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2019/4/18 11:30
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東京生まれのパンダ、シャンシャンも6月で2歳。ブームはやや収束したが、赤ちゃんパンダのいっときの大々的な報道に違和感を持った関西人もいたのではないか。パンダなら和歌山県白浜町におるやん、と。だが、ちょっと待ってほしい。関西人さえも忘れているかもしれないのが神戸市のパンダ。影の薄さは否定できない。3カ所のパンダを比較してみよう。

2000年に来園した雌のタンタン。現在、神戸市の唯一のパンダ。20年に貸与期限が切れるが、延長できるかは不透明=王子動物園提供

2000年に来園した雌のタンタン。現在、神戸市の唯一のパンダ。20年に貸与期限が切れるが、延長できるかは不透明=王子動物園提供

3月、別件の取材で訪れた東京国立博物館(東京・台東)。帰路、近くの上野動物園の前を通りかかった。テレビで見た愛らしいシャンシャンの姿が脳裏をよぎる。昨年11~12月からお母さんと離れ、単独で暮らしているとか。

門をくぐるとパンダ舎へと続く長い行列。平日午後3時すぎ。看板には待ち時間60分以上、受け付け終了3時半とある。カワウソやらリスやらを見て回り、むなしく新幹線に乗った。

同園のパンダはシャンシャンと両親の合計3頭。2017年度の入園者数は2割近く増えて450万人以上だった。同園は「繁殖は動物園の使命と考えています」という。赤ちゃんパンダの存在は大きい。

上野の借りは関西で。大阪・天王寺から特急列車で2時間少し、白浜町のアドベンチャーワールドを訪れた。26歳の雄の永明(えいめい)を筆頭にパンダ6頭。一番人気は昨年8月生まれの彩浜(さいひん)だ。待ち時間たったの2分。目の前で小さな彩浜が床に転がっている。

特筆すべきことに、永明以外の5頭は同園生まれ。同園はパンダ繁殖で世界的な注目を集める。同園によると永明は「飼育下で自然交配し、繁殖した世界最高齢」のパンダという。

次に神戸市立王子動物園へ。パンダ館に入ると、ガラス1枚を隔ててタンタンが竹を持って座っていた。同園職員の栗山聡史さんは「シャンシャン人気で当園の入園者数も増えました」というが、平日の昼すぎで待ち時間なしだった。

同園は入園料600円、中学生以下無料。アドベンチャーワールドの大人4500円、中人3500円、小人2500円と比べると安さが際立つ。上野動物園と比べると、行列なしの手軽さが際立つ。

だが、パンダ1頭というのはやはり寂しい。赤ちゃんも望めない。花木久実子副園長は「パンダとの苦難の多い歩みでした」と、遠い目で話してくれた。

同園に雄のコウコウと雌のタンタンが来たのは00年。震災復興の一環だったが「他にも要因がありました」。神戸市は中国の天津市と友好都市提携を結んでおり、1981年の神戸ポートアイランド博覧会にも天津動物園から2頭のパンダが来た経緯がある。

当初、コウコウとタンタンも繁殖が期待されたが成功せず、02年にコウコウは中国の2代目コウコウと交代。実はこの初代は雄か雌かが判然とせず、後に中国で手術を経て、雌として出産に成功したという。

その後、2代目コウコウとタンタンの間に07年にできた赤ちゃんは死産。08年には出産に成功するが、赤ちゃんは4日目に死亡してしまう。「痛恨でした。四川大地震で中国から専門家が来日できなかったことが大きい」と花木さんは振り返る。

追い打ちを掛けるように10年、2代目コウコウが人工授精のための麻酔中、事故で死んでしまう。日本のパンダはすべて中国からの貸与であり、日本生まれの赤ちゃんもこれは同じ。タンタンも20年、貸与期限が切れる。「延長を申し込んでいるが現時点で見通しは立っていません」

神戸市のパンダの存在感の低さは、不運と苦難の歴史の結果と言える。パンダを熱望する国内の自治体は多い。神戸市のパンダは来年、中国に帰り、震災復興の後押しで仙台市の動物園にパンダが来るのでは、との見方もある。花木さんは「雄を迎え、繁殖へ向けがんばるつもりです」と言い切る。

帰り際、もう一度パンダ館へ。待ち時間ゼロでタンタンを見た。のほほんとした姿で多くの人の期待を一身に集めている。いささか分が悪いのは事実。それでも神戸のパンダがんばれ、と応援したくなった。

(大阪・文化担当 田村広済)

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