エジプト、シシ大統領の任期延長へ国民投票
最長2030年まで 強権政治 長期化の懸念

2019/4/17 17:34
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【カイロ=飛田雅則】エジプトでシシ大統領の任期を最長2030年まで延ばせる憲法改正の是非を問う国民投票が4月中にも実施される見通しとなった。16日の国会で改憲案が可決されたことを受けた措置。過半数が同意すれば成立し、14年に初当選したシシ氏は通算16年間、大統領として国を率いることが可能となる。長期独裁のムバラク政権が崩壊して8年。再び強権政治が長期化する恐れが出てきた。

国会(一院制、定数596)では改憲案に議員の約9割にあたる531人が賛成した。大統領が議決結果を知った日から30日以内に国民投票を実施する規定があり、現地メディアによると、日程は4月22~24日の3日間が有力。有権者数は約6000万人とされる。

改憲案の柱は大統領任期の4年から6年への延長だ。シシ氏の現行任期は2年延長され、24年までとなる。さらに大統領の任期は2期までだが、現職に限っては3期目を目指す大統領選に出馬が可能とした。これでシシ氏は最長30年までの続投が可能になる。当初は34年までの延長が可能だったが、小幅に修正したうえで改めて可決した。

首都カイロの街頭には、至るところに「改憲に賛成を投票しよう」というポスターが掲げられている。18年の大統領選でシシ氏は97%の得票で再選しており、政治学専門のある大学教授は「改憲され、任期が延長する可能性が高い」とみる。

改憲案には大統領に最高裁長官や検事総長を任命する権限を与えるなど、司法の独立を弱めかねない内容も含まれる。軍の役割も「憲法と民主主義の維持」という項目を加えた。軍の政治介入を懸念する声も出ている。

シシ氏周辺は憲法改正で大統領や軍の権限を拡大し、国力を増強する必要があると判断している。サウジアラビアやトルコ、イランと比べて相対的に低下した地域での存在感を高める狙いだ。

エジプトでは11年の民主化運動「アラブの春」で約30年続いた長期独裁のムバラク政権が崩壊した。その後、初めての自由選挙でイスラム原理主義組織出身のモルシ氏が勝利し大統領に就いたが、シシ氏は国防相だった13年、事実上の軍事クーデターでモルシ氏を追放し、14年に大統領選で初当選した。発足以降、治安維持を理由に反対派や言論を弾圧し、国民の不満を強権で抑えてきた。

今回の改憲案は国内外から批判を集めており、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは「大統領と軍は権力を乱用するだろう。人道危機を一段と悪化させることになる」と非難する。

シシ政権のテロ掃討作戦で治安は落ち着きつつある。11年に1%台に急落した経済成長率は15年以降、4~5%に回復している。ガス開発や観光業に加え、軍主導の新首都などの大型プロジェクトで建設業がけん引する。

一方で軍や政府の肥大化が進み、世界銀行は4月の報告書で「民間企業の締め出しにつながっている」と懸念した。民間企業の育成が進まず、世銀によると15~24歳の失業率は12年以降、30%台半ばで高止まりする。

北アフリカでは強権政治を敷く政権が国民の抗議デモを機に相次いで倒れている。スーダン軍は約30年圧政を敷いたバシル大統領を解任した。アルジェリアでは大統領に約20年居座ったブーテフリカ氏が辞任に追い込まれた。近隣国からの飛び火を避けるため、シシ政権は国民への締めつけを強める可能性もある。

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