マラソン朝6時号砲 「五輪特需」やきもき、商店「早すぎる…」
早朝に号砲が鳴るマラソン、深夜まで競技が続くバレーボール――。16日に発表された2020年東京五輪の競技スケジュールは暑さ対策や運営上の問題から幅広い時間設定となった。「五輪特需」を期待していたマラソンコース沿道の商店主からは「早すぎてあやかれない」と落胆。鉄道やバスなどの交通機関は臨時ダイヤの検討を迫られた。

「あまりにも早い」。東京・浅草の仲見世通りで土産物屋を営む60代男性が嘆く。男女とも午前6時に号砲が鳴るマラソン。スタート地点から15キロメートルほどの雷門前は午前7時前に選手が通過すると予想されている。
毎年開催の東京マラソンでは午前10時ごろに選手が通過し、応援客で売り上げが伸びていた。東京五輪のマラソンは男子が午前8時45分、女子が午前9時15分に終わり、観客が集まるか読めない。「オリンピック効果にはあやかれなさそう」と肩を落とした。
雷門から100メートルほどにある商店街をまとめる雷門一之宮商店会の会長、西海応道さん(63)も「店が閉まっている時間帯に選手が通過してしまうのでは意味がない。どう盛り上げていくかを考えたい」と頭を悩ませる。
ランナーが3度駆け抜ける神保町交差点。近くにある江戸時代の古書や浮世絵版画の専門店、大屋書房(東京・千代田)の社長、纐纈公夫さん(80)も「早朝過ぎて店を開けるのは現実的ではない」と苦笑い。沿道の広場などを活用し、太鼓でランナーを鼓舞するなど地域全体で盛り上げていく方法を検討しているという。
一方、同交差点の近くにあるスポーツ用品店、スーパースポーツゼビオ東京御茶ノ水本店の副店長、龍谷和久さん(59)は「スタート時間に合わせて開店することになるのではないか」と話す。周辺に観客が利用できる公衆トイレは十分にないといい「トイレの利用ついでにランニングコーナーも見てもらえたら」と期待する。
最も早い競歩で午前5時半に始まり、最も遅いバレーボールで午後11時半に終わる競技スケジュール。観客の移動に備え、対応を迫られるのが公共交通機関だ。
「コース周辺で応援する大勢の乗客が見込まれる。東京都などと相談し、増発や始発時刻の繰り上げの必要性を考えたい」。JR東日本の広報担当者は気を引き締める。大会期間中は終電を30~90分ほど遅らせる方向で3月に都などと合意した。「始発を早めるとなれば、未明に行う線路など点検作業の調整も必要になるかもしれない」と話した。
競技会場近くは期間中、道路の交通規制が想定される。迂回や折り返し運転などで大幅な影響を受けそうなのが都営バスだ。都交通局の担当者は「(ルートやダイヤは)毎日変わる可能性があり、大変複雑になる。利用客が混乱しないようにどう周知するかが課題」と話す。バス乗り場に案内役の人員を配置するなどの方法を検討している。
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