EU、米との通商交渉 近く開始へ 農産品は除外
欧州委に権限付与 協議は難航も
【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の加盟国は15日、執行機関の欧州委員会に米国との通商交渉に関する権限を与えることで合意した。2018年7月にユンケル欧州委員長とトランプ米大統領が交渉開始で合意して以来、EU側の交渉体制がようやく整う。EUは近く交渉を始めたい意向だが、欧州委の権限には米国が強い関心を示す農産品は含まれず、米国の反発は確実だ。

マルムストローム欧州委員(通商担当)は15日の記者会見で「できるだけ早く米国との交渉を始めたい」と語り、ユンケル氏ら欧州委執行部の任期である10月までに結論を出したいとの考えを示唆した。ユンケル欧州委員長は声明で「工業品の関税の撤廃は米EUの輸出のさらなる増加につながる」と歓迎した。
18年7月にはユンケル氏とトランプ氏は会談で貿易協議入りを表明したが、その後は具体的な動きはなかった。米国は中国との貿易交渉を優先していた一方、EU側はフランスなど農業国が米国との交渉に懸念を示し、加盟国の意思統一が図れていなかったためだ。
最近では動かぬEUにいらだつトランプ氏がEUの航空産業への補助金が不当だとしてEUから輸入する110億ドル(1兆2千億円強)の製品に関税をかける考えを示し、圧力をかけていた。
EUは今回、「農産品と政府調達は話さない」として各国が欧州委に与えた権限に農産品を含めなかった。農業国に配慮したためだが、実際、今回もフランスは反対、ベルギーは棄権した。仏は米が農産品で攻め込もうとすれば、5月下旬に控える欧州議会選に悪影響が出かねないと考えたようだ。最終的にEUとして交渉開始を決めたが「フランスとして国内向けにノーと言う必要があった」(EU筋)という。
米通商代表部(USTR)は1月、対EU交渉の目的を発表した際に農産品の市場開放を求めた。欧州委は対米交渉の席についても農産品は権限を与えられておらず、具体的なことは何も決められない。米欧の交渉は厳しい展開になりそうだ。