運用会社、安定成長遠く 毎月分配・テーマ型依存鮮明に - 日本経済新聞
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運用会社、安定成長遠く 毎月分配・テーマ型依存鮮明に

18年度、首位は三井住友トラスト

投資信託市場で「主役交代」が鮮明になっている。公募株式投信について2018年度の運用会社別の資金流出入を比較したところ、上位には次世代通信規格の「5G」関連などテーマ型投信で残高を伸ばした運用会社が並んだ。一方、かつて主力だった毎月分配型の比率が高い運用会社は流出が目立つ。金融各社は資産運用ビジネスを安定収益の柱と位置づけるが、資金流出入はなお不安定な実態が浮き彫りになった。

三菱アセット・ブレインズのデータをもとに、上場投資信託(ETF)を除く公募株式投信の資金流出入を運用会社別にランキングした。

明確になったのは、新旧の「主役交代」だ。

18年度の流入額で首位だったのは三井住友トラスト・アセットマネジメント。差し引きで4716億円の流入超だった。17年12月に設定した「次世代通信関連世界株式戦略ファンド(THE5G)」が全体の半分近い2189億円の流入となった。3位の三井住友DSアセットマネジメントも「フューチャー・バイオテック」(流入額1852億円)がけん引。上位は「テーマ型」のヒット商品が全体を押し上げた。

一方、流出が止まらないのが「毎月分配型」だ。野村アセットマネジメントや大和証券投資信託委託は16年度までは流入額上位の常連だったが、18年度は流出額で1位、2位となった。米国不動産投資信託(REIT)などで運用する毎月分配型が苦戦し、フィデリティ投信は17、18年度の合計で7000億円弱が流出した。

毎月分配型の投信は、元本を取り崩す例も多いとして長期の資産形成に向かないとの批判が高まった。金融庁も「顧客本位でない」と問題視していた。その結果、業界全体の柱だった毎月分配型の比率が高かった運用会社ほど直近では苦戦する傾向が強まっている。

主役が交代する一方、投信市場全体は「頭打ち」となっている。投資信託協会によると、ETFを除く公募株式投信の純資産残高は3月末時点で64兆1499億円。14年度末の約67兆円をピークに、ここ数年は65兆円前後で推移している。ピーク時に42兆円を超えていた毎月分配型が23兆円台まで減少しており、この分をテーマ型や海外株型で補っている計算だ。

運用会社にとって純資産残高は収益力と直結する。投資家の保有期間が比較的長かった毎月分配型から、流出入が激しいテーマ型に柱が移ったことで、安定成長のハードルが上がっている。18年度首位の三井住友トラスト・アセットは17年度の流入額は30億円程度だった。「テーマ型依存」も収益の柱としては脆弱だ。

ある運用会社の幹部は「テーマ型を好む顧客には、ある程度値上がりしたら売却して別の投信を買う傾向も強く、足の早いお金が集まりやすい」と指摘する。

新分野のカギとなるのは資産形成層と海外の取り込みだ。

過去10年の資金流出入を見ると、レオス・キャピタルワークスやセゾン投信、鎌倉投信は一度も流出がない。金額は小さくても、積み立てを中心に資産形成層を掘り起こしてきた。三井住友DSアセットマネジメントや三菱UFJ国際投信がインターネットを通じた「直販」を始めたのはその布石だ。

海外に活路を求める動きもある。三菱UFJフィナンシャル・グループはオーストラリア最大手銀行、コモンウェルス銀行(CBA)傘下の資産運用会社を19年中にも買収する。三井住友アセットも、香港で運用する商品の販売がマレーシアで始まるなど、海外展開を加速させる。各社とも毎月分配やテーマ型に変わる次の柱の育成を急いでいる。

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