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イチローの原点 屈辱を原動力に
スポーツライター 丹羽政善

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2019/4/15 6:30
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ただ、そこまで実績を積んでなお、いつかメジャーでも首位打者を取ってみたいと口にすると、冷ややかな反応が返ってきた。

「(プロで)何年かやって、日本で首位打者も取って、今度、米国に行くときに首位打者になってみたい――と話したら、やっぱり笑われた」

これも、ローズを超えた日に明かした話だが、イチローはこう言葉を継いでいる。

「でも、それ(メジャーで首位打者)も2回達成した。常に人に笑われてきた悔しい歴史が僕の中にはあるので、これからもそれをクリアしていきたい思いは、もちろんあります」

3月の引退記者会見の言葉にはイチローの正直な思いがこもっていた=共同

3月の引退記者会見の言葉にはイチローの正直な思いがこもっていた=共同

当時から、最低50歳まで現役、ということをイチローは公言していた。"これからも"という表現には、それを疑う声に対する反発にも聞こえたが、先日の引退発表でその思いは断たれた。それでも、そのことに対し引退会見でこう話したことは、多くの人の心を打った。

「有言不実行の男になってしまったわけですけど、まあ、でも、その表現をしてこなかったら、ここまでできなかったかもなという思いもあります。だから、難しいかもしれないけど、言葉にして表現することっていうのは、目標に近づく一つの方法ではないかなと思っています」

積み上げた数字で周囲を黙らせ

ところで、これまでの話とは少しトーンが異なったのが次のエピソードだ。2010年9月23日、トロントで10年連続200安打を達成した試合後のこと。思うところを聞かれると、「ひとつ言えるのは……」とイチローは切り出した。

「最初のスプリングトレーニングで、誰だっけかな、マイク・ハンプトン(当時ロッキーズ)というピッチャーがいましたけど、あのピッチャーと対戦したときに、割と早い段階だったと思いますけど、『彼からヒットを打てると思いますか』っていう質問が飛んできたんですよね。まあ、あの質問は一生忘れないです」

ハンプトンは前年までアストロズとメッツで5年連続2桁勝利を挙げ、アストロズ時代の99年には22勝4敗で、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。サイ・ヤング賞の投票でも2位となった。その当時、リーグを代表する好投手の一人ではあったが、イチローは愕然(がくぜん)とした。

「最初は侮辱から始まりましたから。かなり侮辱されましたからね、スプリングトレーニングでは」

鮮明に記憶が蘇ったのか、その言葉は怒気を含んでいた。言われた当時は怒りを通り越して、あぜんとしたかもしれない。しかし、それでも10年経って、その質問がいかに的外れなものであったか、証明してみせた。

「今日、10年200本(安打)を続けて、ヒットが出ないと『何で出ないんですか?』っていう質問に変わったわけですよね。そういう状況をつくれたことはすごくよかった」

積み上げた圧倒的な数字は、何よりも説得力があった。

「僕はそれほど10年前とアプローチとか野球に対する思いとか変わっていないですけど、そういう周りを変化させられたことに対してはちょっとした気持ちよさがある」

野球愛を貫き、平成という時代を疾走したイチロー。改めてキャリアを振り返ると、そこには、常に否定されてきた過去がある。

そしてそれを、一つ一つ覆してきた。むしろそれを糧とした。確実にイチローを支えた力の一つになった。

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