2019年4月20日(土)

枝野理論と「自民支持層」

風見鶏
コラム(経済・政治)
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2019/4/14 2:00
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「小選挙区制の下で、もし安倍を辞めさせたら次は枝野になってしまう、と自民党支持層が思うから内閣支持率が落ちない」と立憲民主党・枝野代表は分析する=共同

「小選挙区制の下で、もし安倍を辞めさせたら次は枝野になってしまう、と自民党支持層が思うから内閣支持率が落ちない」と立憲民主党・枝野代表は分析する=共同

野党第1党・立憲民主党の枝野幸男代表が昨年来、考え続けていることがある。「体感と違って内閣支持率が落ちない。10~15年前ならものすごく落ちる問題が起きても下がらない」

2018年は学校法人「森友学園」を巡る財務省の文書改ざんが発覚し、野党は安倍晋三首相を追及した。今年は厚生労働省の統計不正があった。枝野氏によると自民党支持者からも「何とかして」と声が届き、手応えを感じたという。

ところがいくら追及しても支持率は下がらない。昨年来の日本経済新聞の世論調査で不支持率が支持率を上回ったのは、森友問題で証人喚問などがあった18年3~5月と7月だけだ。第2次安倍政権が発足した12年12月から19年3月の調査で他に不支持が上回ったのは5回あるが、2カ月以内に逆転を解消している。

平均値も高い。01年の小泉政権以降の8つの政権で発足後から退陣までの平均支持率を計算すると、今の政権は約54%。小泉政権の約52%を上回り最高値だ。不支持率も約36%で最低の小泉政権に近い水準だ。

首相の経済政策「アベノミクス」で景気が堅調だという背景はある。とはいえ不祥事があった場合の支持の底堅さは特徴的だ。

枝野氏は考え抜いた末に「自民党支持者は小選挙区制を本能的によく分かっている。いまはガチガチの自民党支持が35~40%ぐらいいるのではないか」と思うようになったという。

1996年の衆院選から導入した小選挙区制は他候補より1票でも多ければ当選する。複数が当選する中選挙区制に比べてわずかな世論の変化で一方的な勝敗がつきやすい。09年の政権交代の記憶が残る自民党支持層は政権への支持を失うリスクが身に染みている。「小選挙区制の下でもし安倍を辞めさせたら次は枝野になってしまう、と自民党支持層が思うから支持率が落ちない」と分析する。

真偽はどうか。01年以降の自民党政権について自民党支持層の支持率と不支持率の平均を調べてみた。

12年12月~19年3月の自民党支持層の内閣支持率は平均で約88%だ。同じ長期政権だった小泉政権の約78%を10ポイントも引き離す。自民党支持層の内閣不支持率はいまは平均約7%。これも約13%と低かった小泉政権の半分程度しかない。

自民党の政党支持率も高い。いまの政権下では平均で約43%。01年以降でトップレベルだ。政党支持率の最高は56%で最低は35%。いずれも01年以降で最も高い。最低の35%は枝野氏が話す「ガチガチの自民党支持層」と同じ数値だ。「枝野理論」の通り、自民党支持層が結束して政権を支える実態が浮き彫りになる。

一方、一連のデータは「ポスト安倍が長く不在だから」という説明もつく。自民党内で安倍首相に代わる有力者がいて「早く交代を」と望む声が多ければ、自民党支持層の内閣支持率は下がる可能性がある。

「55年体制」と呼ばれた自民党長期政権のときは複数の総裁候補が競い、自民党内で政権を打倒する動きもあった。当時は最大野党の社会党が衆院過半数を得るための候補者数をそろえていない時代だ。自民党は内閣支持率の下落や政権交代を気にせず、激しい党内抗争をしていた。

いま野党は割れ、政党支持率も高くない。自民党の1強他弱と言われる。今後、野党が警戒すべきことは何か。内閣支持率が下がっても、自民党支持率が高止まりする状況だ。それは自民党やその支持層が「野党への政権交代を心配する必要はない。安心して党内政局にいそしめる」と判断したサインかもしれない。

(政治部次長 佐藤理)

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