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「役者と対話する舞台美術」島次郎氏の遺産

舞台美術家はもの言わぬ表現者だ。9日、73歳で亡くなった島次郎は、セリフを発する役者はどこに立つのかと考え抜いた人だった。装置の質感が、演技に霊感を与える多くの瞬間があった。

演劇賞を総なめにした「焼肉ドラゴン」(鄭義信作)やシェークスピアの史劇「ヘンリー六世」(鵜山仁演出)は、島の装置あっての成果だった。前者は焼肉店の臭いがするようなバラック、後者は鉛色のリノリウムの大地。役者の身体感覚を突き動かすモノの力が、悲劇を浮き彫りにした。

武蔵野美術大学で油絵を学びながら学生劇団にかかわり、唐十郎のテント劇場に衝撃を受けた。廃品を多用する装置は現代アートの最前線と共振する試みであり、小劇場で竹内銃一郎や松本修らと既成観念にとらわれないデザインを模索した。沈黙劇で知られた太田省吾と廃品の大地を考案した経験は「ヘンリー六世」で開花した。

ソウルの「焼肉ドラゴン」公演で、スタッフと食事する島にはチームワークを大切にする意志がみなぎっていた。栗山民也演出のオペラ「蝶々夫人」の長い階段も、スタッフの総意を映しだすものだっただろう。写真集「舞台美術 島次郎 1986-2018」(朝日新聞出版)が出たばかり。現代演劇史に随伴した作品群だ。

(内田洋一)

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