2019年6月19日(水)

中国主導の鉄道建設再開へ マレーシア、費用減で合意

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アジアBiz
2019/4/12 20:30
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【シンガポール=中野貴司】マレーシアと中国は12日、中止していたマレーシア東海岸鉄道の建設を再開することで合意した。財政再建が急務のマレーシアに配慮して、建設費用を215億リンギ(約5800億円)圧縮する。中国にとっては費用圧縮を受け入れる代わりに、広域経済圏構想「一帯一路」の関係国との融和を国際社会に訴える狙いがある。工事の利益が地元に落ちるような見直しも行われる見通しだ。

マレーシア首相府は同日、東海岸鉄道の建設費用を当初の655億リンギから440億リンギに削減することで政府傘下のマレーシア・レール・リンク社と国有の中国交通建設が合意したと発表した。首相府は「建設費の削減は財政負担の軽減に間違いなくつながる」と再契約の意義を強調した。

東海岸鉄道は中国側も習近平(シー・ジンピン)国家主席肝煎りの一帯一路の旗艦案件と位置づけていた。中国輸出入銀行がマレーシア側に融資し、実際の建設は主に交通建設が担う中国主導の色が強い案件だった。

マハティール政権は利払いや土地取得費用など隠れたコストを含めれば総費用は800億リンギを超えるとの試算を発表。ナジブ前政権が中国と結んだ「不平等な契約」の象徴と主張して、いったん中止に踏み切った。

建設再開の合意書を交わすマレーシア代表のダイム氏(前列右)ら(12日、北京)=中国交通建設提供

建設再開の合意書を交わすマレーシア代表のダイム氏(前列右)ら(12日、北京)=中国交通建設提供

マハティール氏は18年8月の訪中時にも「新たな植民地主義は望まない」と中国にクギを刺した。しかし一方的に中止すれば多額の違約金が発生し、財政負担が増す恐れがあったため、水面下で再交渉を続け総額引き下げに成功した。同氏の腹心で、交渉を担ってきたダイム・ザイヌディン氏は12日に北京で記者団に対し「総距離は648キロメートルとなり従来より約40キロメートル短くなる」と、一部区間が圧縮・変更されるとの見通しを示した。

さらに工事の大半を中国から派遣された作業員が担い、地元が十分利益を享受できないとの批判にも応える。ダイム氏によると、再委託会社の約4割はマレーシア企業になるといい、地元にも恩恵があると強調した。

東海岸鉄道は中国企業主導で建設が進んでいた(2018年6月当時)

東海岸鉄道は中国企業主導で建設が進んでいた(2018年6月当時)

建設再開で、経済開発が遅れているマレー半島東部のインフラ整備を加速できる。経由地のクアンタンでは地場建設大手IJMコーポレーションが中国勢と共同で、工業団地の開発を進めてきた。東海岸はナジブ前首相や、イスラム主義の野党、全マレーシア・イスラム党(PAS)の地盤で、政権は与党連合の成果としたい考えだ。

マレーシア政府は20年5月末まで凍結しているシンガポールとの高速鉄道計画についても再開の可能性を探る。マハティール氏は9日、シンガポールのリー・シェンロン首相と会った際、実現可能なコスト削減の方法を詰めることで合意した。

総費用が1兆6000億円に上るとされる同計画を巡っては、JR東日本などの日本連合と中国、欧州勢などが受注競争を展開していた。計画再開になれば政府も巻き込んだ主要国間の受注競争が再び繰り広げられそうだ。

▼マレーシア東海岸鉄道
 マレーシアのナジブ前政権時代の2017年8月に着工した総延長600キロメートルを超える鉄道計画。北部のタイ国境から東海岸を経由して、首都クアラルンプールを通りマレー半島西岸のクラン港に至る。財政再建を掲げて18年5月に発足したマハティール政権は同年7月に中止を発表した。

▼中国「一帯一路」巻き返し
 止まっていたマレーシア東海岸鉄道の建設再開で合意したことは中国にとっても意義が大きい。アジアでは中国が影響力を確保する「債務のワナ」に陥りかねないとの懸念が高まっており、その象徴とも言える同計画が復活することは中国の「一帯一路」推進には追い風になるためだ。
 インド洋の島国モルディブでは6日の議会選で親中派が敗れるなど、脱中国依存を探る動きが出ている。中国は月内にも世界各地から首脳を多数集めた一帯一路に関する国際会議を開き、巻き返しを図る。
 会議にはマレーシアからはマハティール氏も出席する見通しで、国際発信力が強いマハティール氏との良好な関係を示せれば国内外にアピールできる。欧州連合(EU)の規制強化で輸出減の恐れが高まるマレーシアのパーム油を中国企業が3月に大量購入する契約を結ぶなどマレーシアとの関係改善を急いできた。

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