米、ウィキリークス創設者の引き渡し要請 英の審理、長期化も

2019/4/12 15:42
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【ワシントン=中村亮、ロンドン=押野真也】米司法省は11日、政府の機密情報への不正アクセスに関与したとして内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ容疑者を起訴し、身柄を引き渡すよう英国側に要請したと発表した。米国の安全保障を脅かしたことを理由に挙げるが、機密取得を巡る活動の犯罪認定は言論の自由に反するとの批判もある。5月に始まる引き渡しの審理では英国は難しい判断を迫られる。

「ウィキリークス」創設者のアサンジ容疑者(11日、ロンドン)=ロイター

米司法省が11日公表した起訴状によると、同容疑者は2010年に協力者である米軍関係者が機密情報にアクセスするためのパスワード取得を手助けした。テロ組織の戦闘員を収容するグアンタナモ米軍基地に関する800件の内部文書や25万件の外交公電の提供も受けて次々と公開した。

米政府は安保に対する脅威とみなしたアサンジ容疑者をロンドンのエクアドル大使館から追放するよう同国政府に水面下で働きかけてきた。英国外務省は11日「英国内で(同容疑者を)適正な司法手続きにかける」との声明を出した。引き渡しに関する審理は5月2日に始める。

英国政府は海外からの身柄引き渡し要求に対して、拷問や死刑となる恐れがある場合には原則的に引き渡さない方針を決めている。エクアドルのモレノ大統領も11日「死刑や拷問のある国には引き渡さないと英国は約束した」と発表した。

過去には、米国の身柄引き渡し要請を英国が拒否したケースもある。12年には米国人ハッカーが英国で逮捕され、米国が引き渡しを要請したものの、英政府は「(精神的に)ひどく病んでいる」との理由で拒んだ。

ただ、アサンジ容疑者の事件は安全保障にかかわるだけに、今回は米国の同盟国としてとりわけ難しい対応を迫られることになる。複数の英メディアは英政府が最終的な決定を下すまでに数年間かかる可能性があるとも伝えている。

アサンジ容疑者は米国の主張に真っ向から反発している。同容疑者の弁護士は11日、記者団に「米国に関する真の情報を伝えたことで訴追対象になった」と米国を非難した。

国際非政府組織(NGO)の「国境なき記者団」も11日の声明で「公共の利益に資する情報提供を理由にアサンジ容疑者を標的にすることは完全に懲罰的な措置で、記者や内部告発者にとって危険な前例をつくることになる」と非難した。米国の引き渡し要請に応じないよう英当局に求めた。

トランプ大統領はロシア政府に近いアサンジ容疑者の逮捕に複雑な思いを抱いているようだ。11日、ホワイトハウスで記者団に「ウィキリークスに関することは何も知らない。私が関わることではない」と強調した。「司法長官が対応する」と淡々と語った。大統領選中には「ウィキリークスを愛している」などと高く評価していたが、11日は態度を一転させた。

同容疑者は16年の大統領選でトランプ氏の選挙陣営の元幹部と仲介者を通じて接触し、ライバル候補のクリントン元国務長官に不利な情報を流出すると事前に伝えたとされる。トランプ陣営とロシア政府の共謀疑惑では裏付ける証拠は見つからなかったと米司法当局が3月末に結論づけたが、逮捕をきっかけに問題が蒸し返されかねないと懸念しているとみられる。

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