2019年6月20日(木)

動画配信 ディズニーも 作品に強み「共食い」懸念も

ネット・IT
北米
2019/4/12 15:01
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米ウォルト・ディズニーがついに動画配信に参入する。今年11月にサービスを始める米国での価格は月6.99ドル(約780円)と、ネットフリックスより安く設定。ミッキーマウスが象徴するキャラクターや作品の強さを武器に、先行するIT(情報技術)大手を追い上げる。買収を重ね「コンテンツ帝国」を築き上げた老舗は、次世代通信規格「5G」をにらんで参入が相次ぐ動画配信の世界をどう揺さぶるか。

ウォルト・ディズニーが11月に米国で始める動画サービスでは「ディズニー」「ピクサー」などの映画作品を楽しめる(11日、米カリフォルニア州バーバンク)

ウォルト・ディズニーの動画配信サービスでは「ディズニー」「ピクサー」などのコンテンツを楽しめる

ボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)の構想の全貌がようやく明らかになった。11日に詳細を発表した動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」。アプリには「ディズニー」「スターウォーズ」など5つのアイコンが並ぶ。「フローズン(アナと雪の女王)」や「トイ・ストーリー」など初年度から楽しめる過去の映画作品は約400点、新作も100点。配信専用の作品も10以上用意する。

スクリーン上にヒーローや人気キャラクターが次々と現れるディズニープラスの発表会は、ディズニーの強さともろさの両面を映し出す。

強さは買収を重ねるたびに強固になるコンテンツの力だ。ディズニープラスで見られる映画の多くは、06年に買収したピクサーや09年に買収したマーベル、12年に買収したルーカスフィルムの作品。今年3月には713億ドルを投じた21世紀フォックスの買収手続きも終え、アカデミー賞を受賞した「フリーソロ」など、手に入れたばかりのナショナルジオグラフィックのドキュメンタリー作品もディズニープラスに盛り込んだ。

6.99ドルというネットフリックスの通常プラン(12.99ドル)の約半額、高画質の映像が見られないベーシックプラン(8.99ドル)と比べても2ドル安い価格も、豊富な作品群を自前で抱えているからこそできる設定だ。

JPモルガンのアナリスト、アレクシア・クアドラニ氏は「ディズニー作品の強さを考えれば最終的に米国で4500万人、世界で1億6千万人規模の契約者が見込める」と予測する。18年末時点で1億3900万人の契約者を抱えるネットフリックスと十分に渡り合えるとの見方だ。

一方で、北米の映画興行収入の4割を占めるハリウッドを代表するディズニーが動画配信に乗り出せば、劇場映画とのカニバリゼーション(共食い)を起こしかねないとの懸念は絶えない。

ディズニーの映画製作部門でマーケティングを担当するアサド・アヤズ氏は3月に日本経済新聞の取材に対し「すでに映画好きな人は動画配信も楽しんでいる。動画配信は敵ではない」と説明した。ただ現実には、たとえカニバリゼーションが起きたとしても動画配信の戦いに加わらざるを得ないという事情もある。

ディズニーは、15年に世界で1億9千万件だった動画配信の市場規模(契約件数ベース)が、20年には8億1千万件に増えると見込む。ネットフリックスやアマゾン・ドット・コムの「プライムビデオ」は各国の家庭に浸透している。今秋にはアップルも「アップルTVプラス」の名称で動画配信サービスに乗り出す。アップルの独自作品に出演する女優のリース・ウィザースプーン氏は「うちの子どもたちは映画館には行かない」と業界が直面する変化を話す。

ディズニー作品は親から子、孫へと代々愛される作品が多いことが強み。ただ肝心の子どもたちがヒーローやキャラクターに接する機会を作れなければ、次世代へは受け継がれなくなる。

だからこそ、アイガー氏は数年がかりで準備を進めてきたともいえる。ネットフリックスの急速な成長を目の当たりにしてアイガー氏から動画配信を意識する発言が増え始めたのは16年ごろ。17年に「独自の動画配信サービスを始める」とぶち上げると配信技術を持つ企業を買収したりネットフリックスへの作品供給を引き揚げたりしてきた。11日には「96歳の会社を生き残らせ、(100年目以降の)2度目の世紀も成長を続けようとしている」と意気込んだ。

11日の発表を受け、投資家からはディズニープラスに対する前向きな反応が目立つ。もっとも、急速に普及している定額課金型(サブスクリプション)のサービスは、消費者にとっては負担増となる。米マギッド・リサーチによると、米国の消費者が動画配信コンテンツに出せる金額は「月38ドルまで」だという。それぞれのサービスでしか楽しめない独自の作品がいずれも魅力的であったとしても、消費者がすべてを買えるわけではない。財布の奪い合いがいっそう激しさを増す。(シリコンバレー=佐藤浩実)

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