14日告示の東京区長選・区議選 投票率低迷の理由は
統一地方選後半戦の東京都区部では、11区長選と20区議選が14日に告示され、21日に投票が行われる。都の区は都民にとって行政サービスを受ける最も身近な「基礎的自治体」だが、区長選と区議選への関心は低く投票率は低迷している。専門家は「少子高齢化が進むなか、税金の使い方が重要になる。区民はもっと区政に関心を持つべきだ」と指摘している。

2015年の区長選・区議選は、12年に当時の石原慎太郎知事が任期途中で辞任した影響で、都知事選の日程が初めて外れた。その結果、11区長選の平均投票率は44.11%、21区議選の平均投票率は42.81%。11年に比べ区長選は0.4ポイント減で過去2番目の低さ、区議選は0.42ポイント減で過去最低だった。
21区議選の中で港区は36.02%と最も低かった。国政選挙の投票には行くという港区の女性会社員(25)は「地方選は関心がないので、投票には行かない。港区役所が何をしているのかも知らない」と話す。
新宿区の男性会社員(36)は「区議選に投票に行っても、どんなメリットがあるのかわからない」。目黒区の女性(26)は「候補が多い地方選は公約を調べるだけで疲れる。政策で自分の実生活がどう変わるのかイメージできない」と語る。
なぜ区長選や区議選の投票率は低くなるのか。山梨学院大の江藤俊昭教授(地域政治論)は「東京都区部はインフラが整備されて生活しやすいため、ほかの地域と比べても議会や行政への関心が低くなる傾向がある」と指摘。「ただ都区部もこれから高齢化や人口減少の波がやってくる。税金の使い方が一段と重要になり、区民は区政に無関心でいるべきではない」と話している。

低迷する投票率アップを図るため、各区の選挙管理委員会は若者らに投票を呼びかけている。港区の選管はアニメのキャラクターが投票を呼びかける動画を作成し、多くの人が集まる駅構内のモニターなどで流している。新宿区の選管は若者向けに啓発チラシを作成し郵送配布したという。
神戸大の品田裕教授(投票行動学)は「保育所の設置やごみ処理の問題など、住民の生活に直結する施策を扱うのが地方議会や地方行政なので、住民にとって重要性は高い。ぜひ投票に行ってほしい」と強調する。
●東京23区は「特別区」
東京23区は「特別区」で、市と同じ独立の自治体として扱われる。名称は1947年成立の地方自治法に「都の区はこれを特別区という」と定められたことに由来する。一方、政令市にある区は「行政区」で、市長の事務執行を分担するもので独立の自治体ではない。住民基本台帳によると、23区の人口は約900万人。都全体は約1300万人で、全体の約7割が23区に住む。最も人口が多い区は世田谷区で約90万人、練馬区と大田区も70万人を超えている。
23区は市と同様、住民に最も近い「基礎的自治体」だ。巨大な人口を持つ東京の場合、都が「広域自治体」、特別区が基礎的自治体と役割を分担している。特別区の区長は選挙で選ばれ、区議会がある。条例を制定し、住民税の個人分を課税する。都区間や特別区間の財政調整を行う特例制度により、住民税の法人分と固定資産税は都が課税する。市は保育園や幼稚園、小中学校、福祉事業、ごみ処理、道路・公園、防災、住民票・戸籍事務、文化、健康、まちづくりなど多くの事業を担う。特別区も同じだが、上下水道や消防などの事業は都が担う。
特別区をめぐっては、4月7日投開票の大阪府知事と大阪市長のダブル選で圧勝した大阪維新の会は、政令市の大阪市を廃止し、大阪市にある現行の24行政区を、東京23区と同様の特別区に再編する「大阪都構想」を掲げている。

4年に一度の統一地方選が行われる。今年は統一地方選と夏の参院選が12年に一度重なる「亥(い)年選挙」。与野党対決となる北海道知事選などがあり、夏の参院選と合わせて結果が注目される。