大和、高岡店を8月に閉店 競争激化で収益悪化

百貨店の大和は11日、富山県高岡市で運営する高岡店を8月25日の営業を最後に閉店すると発表した。近隣の商業施設との競争激化などを背景に売り上げ減少に歯止めが掛からず、収益改善が困難と判断した。主力の香林坊店(金沢市)と富山店(富山市)に経営資源を集中する。人口減少で地方経済の地盤沈下が続く中、北陸の百貨店がまた一つ姿を消す。

同日、記者会見した宮二朗社長は「地域のお客様に申し訳ない気持ちだ。会社の将来を見据えた苦渋の選択だった」と理解を求めた。店舗の閉鎖に伴い、2019年2月期に49億円の特別損失を計上。連結最終損益は47億円の赤字に転落し、5期ぶりの無配となる。59人の従業員は他店への配置転換で雇用を維持する方針という。

高岡店は1943年に開設。94年に地域の再開発に伴って現在の場所に移転し、第三セクター会社から建物を借りる形で運営している。96年度のピーク時には131億円を売り上げたが、郊外の商業施設との競争激化を背景に客足が細った。19年2月期の売上高は38億円で14期連続で減収となり、3期連続の赤字に陥った。

岡本志郎営業本部長は同日の記者会見で「高岡店ではこの1~2年の間に、20店舗以上のテナントから退店や条件変更の申し出が寄せられていた」と明かした。百貨店を含む小売業界は今年10月に予定する消費増税が逆風になるうえ、システム改修などのコストがかさむことが見込まれている。不採算店舗の整理で収益基盤を強化する。
大和は北陸を代表する百貨店で、最盛期には新潟県を含めて7店舗を展開していた。その後、10年に新潟県の長岡店、上越店、新潟店、石川県の小松店を閉じ、現在の3店舗体制となった。高岡では今後、小規模なサテライトショップを開設する方向で検討を進め、主力店舗は金沢と富山の2店舗に集中する。
北陸新幹線の開業効果が続く金沢では、旗艦店の香林坊店で訪日客などが増加。化粧品を中心に売り上げを伸ばし、同店は19年2月期に21年ぶりの増収を確保した。会社全体の連結売上高も456億円と12年ぶりの増収となった。富山エリアでは昨年に外商の営業を富山店と高岡店で一体運営し、来店客の減少を外商の固定客で補う戦略を進めている。
(小野嘉伸)
周辺に競合施設相次ぐ 存在感低下
大和高岡店がある富山県西部では2015年の北陸新幹線開業後、大型の商業施設が相次ぎ誕生した。周辺の勢力図が大きく塗り替わる中、売上高が219億円の香林坊店の2割にも満たず、同社の3店の中でも規模が最も小さい同店は、投資の順番も後回しになりがち。旧来型の百貨店からの脱皮が難しく、地域で存在感を示すのが難しくなっていた。
高岡店は1994年にあいの風とやま鉄道高岡駅の北側に位置する現在の場所に移った。もともと富山県西部は金沢市と富山市に挟まれ、買い物客も両市に流れる傾向がある。百貨店としては集客が難しい場所だった。
2002年には同駅の南側にイオンが現イオンモール高岡を開業。さらに、新幹線開業後の15年には、高岡市に隣接する小矢部市に三井不動産がアウトレットモール、砺波市にイオンが「イオンモールとなみ」を開業した。19年秋にはイオンモール高岡が増床し、店舗数を1.5倍に増やす予定だ。大和としては反転攻勢が難しい状況だった。
高岡市の高橋正樹市長は11日、「大きな驚きをもって受け止めている。誠に残念」というコメントを発表した。3月末時点の人口が約17万1000人の同市ではここ数年、毎年1000人規模で人口減が進む。イオンモールが位置する新幹線の新高岡駅周辺と、旧来の市街地である高岡駅周辺の両方ににぎわいをつくる戦略を進めるが、市の財政は厳しく両立は難しい。大和の閉店は同市の苦境ぶりも映している。