2019年5月24日(金)

大島・ハンセン病施設で「美しい時間」 女優ウルマン氏
瀬戸内国際芸術祭2019

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コラム(地域)
中国・四国
2019/4/12 7:00
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瀬戸内国際芸術祭2019の映像作品に出演するノルウェーの有名女優、リヴ・ウルマン氏が作品制作のためハンセン病の療養所がある大島(高松市)を訪れた。国の隔離政策に苦しみながらも生き抜いてきた島民の人生を、映像作品の中でナレーションする。訪問を終えたウルマン氏は「とても美しい時間だった」と述べた。

身ぶり手ぶりを交え、情感豊かに島の印象を話した(右はアーティストのバスティアンス氏)

身ぶり手ぶりを交え、情感豊かに島の印象を話した(右はアーティストのバスティアンス氏)

作品名は「大切な貨物」。オランダ人アーティストのクリスティアン・バスティアンス氏が指揮を執り、映像とライブパフォーマンスを組み合わせた作品に仕上げる。秋会期(9月28日~11月4日)に披露する予定だ。

作品は国立療養所大島青松園(高松市)の入所者の声がベースとなる。作品作りのためウルマン氏は9~11日、大島へと船で渡り入所者との対話を重ねた。

ウルマン氏はハンセン病に対する隔離政策の事実を聞き、大島へと向かう船の中で涙を流した。だが、大島を訪れた後、希望に満ちた気持ちになった。「人生への希望を失わなかった」。お互いを支え合いながら生きる入所者の姿に心を打たれた。高松港周辺で報道陣の取材に応じたウルマン氏は3日間を振り返り、「彼らの中からあふれてくる愛や希望を、世界中に広げていくべきだ」と話した。

世界的に有名な女優が、なぜ瀬戸芸の作品に出演することを決めたのか。ベトナムからの難民で、ハンセン病の女性と出会った40年前の出来事がきっかけだった。

ハンセン病隔離施設の中で年老いた女性が、ハンセン病に感染しておびえて泣いていた。ウルマン氏自身も恐れがあったものの、彼女を抱きしめた。すると首のあたりから、昔いつも自分を抱きしめてくれていた祖母と同じにおいがした。

その体験を通して、人間は皆同じ家族であるという啓示を得た。人生を変えるきっかけとなった。その思いを多くの人に伝えたいと強く願う。大島での滞在を経て「感じたこと、良き人々との出会いを今後も語っていきたい」と述べた。

9日には香川県の浜田恵造知事と会談し、ウルマン氏は「この地の知事であることを誇りに感じてほしい」と述べた。瀬戸内の島々に世界中のアーティストが集まり、ボランティアも含め瀬戸芸には様々な人が関わる。「信じられないことが、今ここで起きている」と力を込めた。

大島北部の散策路。鴻池氏は過去に道を開拓した人のエネルギーを感じて欲しいという

大島北部の散策路。鴻池氏は過去に道を開拓した人のエネルギーを感じて欲しいという

かつての道、入所者の思いしのぶ
 瀬戸内国際芸術祭の開幕を26日に控え、大島では制作活動が急ピッチで進んでいる。鴻池朋子氏は大島で、入所者が1933年に切り開いた散策路を再び整備するプロジェクトを展開する。「リングワンデルング」と名付け、島北部を周回できる道を開拓して来島者が歩けるようにする。
 「重機がない時代に道を開拓した人々の、外を見たいというエネルギーを体感してほしい」と鴻池氏。長い間使われていなかった道のため、人の背丈を超えるシダが生い茂っていたが、切り開いていくにつれて、道として使われていた痕跡を確認できるようになった。
 鴻池氏は島の人々に、過去の話を聞いて回った。散策路の途中には、瀬戸内海の景色を望めるように開けた場所がある。「ここでは故郷を思い出して、自分の出身地の方角を眺めていた。集団生活を強いられた人々が、一人になれる時間を求めてこの道に足を運んだのではないか」。過去に思いをはせながら、芸術祭の準備を進めている。(櫻木浩己)

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