2019年5月21日(火)

スーダン軍、バシル大統領を解任・拘束
30年の強権支配、民衆デモで幕

中東・アフリカ
2019/4/11 16:46
保存
共有
印刷
その他

【ドバイ=岐部秀光】北アフリカのスーダン軍は11日、スーダンで30年におよぶ強権支配を敷いたオマル・バシル大統領(75)を解任し、拘束したと発表した。スーダンでは2018年12月からバシル氏の退陣を求めるデモが拡大しており、これに軍が同調した。人口4千万人を超すアラブ世界の大国のひとつが民主化に向かうと期待する一方、混乱で暴力が広がるおそれもある。

スーダンのアワド・イブンオウフ国防相は同日の国営テレビを通じ、バシル氏の権限を剥奪したと発表した。「暫定軍事評議会」を設置し、今後2年間にわたり国家を統治し、その最終段階で大統領選挙を実施すると指摘した。

2月に非常事態を宣言したスーダンのバシル大統領(ハルツーム)=ロイター

2月に非常事態を宣言したスーダンのバシル大統領(ハルツーム)=ロイター

憲法を停止し、国境を閉じるとともに、24時間は空域も閉鎖するとした。さらに、3カ月の国家非常事態宣言も発令した。バシル氏については「安全な場所にいる」と強調した。

米CNNテレビはアヤラ首相や与党「国民会議党」のハルーン党首、フセイン元国防相、サレハ元副大統領などが逮捕されたと報じた。同日朝からテレビやラジオは予定を変更して愛国音楽を流した。首都ハルツームの空港も閉鎖された。

「サウラ(革命)だ! サウラだ!」大統領府や軍司令部前に集まった民衆は踊ったり、歌ったりして、バシル氏の退陣を歓迎した。

ただ、民主化や法の支配を求めてきた民衆が、バシル氏退陣後の体制を受け入れるかどうかは不透明だ。スーダンが、クーデターと圧政と混乱を繰り返した歴史に終止符を打てるかは、軍が早期に民主化のプロセスを始動できるかがカギをにぎる。

選挙まで2年もの期間を設定した軍の決定には、またしても長期の軍政支配に舞い戻りかねない不安も向けられる。ハルツームでは軍や治安部隊兵士が国防省や主要な道路・橋の付近で目を光らせ、ものものしい雰囲気に包まれている。

「反バシル」デモのきっかけは昨年、政府がパンの値上げを発表したことだ。治安部隊とデモ隊が衝突し、11日までに少なくとも49人が死亡した。治安部隊が催涙ガスや実弾を用いてデモ隊を威嚇するなか兵士の一部が市民を守ろうとするなど、軍がデモに同調する兆しもあった。

バシル氏は2月、非常事態宣言を出し、活動家らを拘束してデモを押さえ込もうとした。だが、物価の高騰で苦しい生活に直面する市民の怒りに、むしろ油を注いだ。

1989年のクーデターで政権を手にしたバシル氏は、反体制派を弾圧して強権的な支配を続けた。西部ダルフール地方の紛争における「人道に対する罪」と「戦争犯罪」の疑いで国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出された。米政府はスーダンをテロ支援国家に指定、経済制裁で圧力を加えてきた。

同じ北アフリカのアルジェリアで、長期の強権支配を敷いたブーテフリカ大統領が今月、市民らの要求で辞任に追い込まれたことにも、デモ隊は刺激を受けたもようだ。

アラブ諸国の強権指導者たちは、民衆の抗議行動によって次々と政権が倒れた2011年の「アラブの春」の再現になるシナリオに神経をとがらせる。

スーダンやアルジェリア情勢をめぐるアラブメディアの報道は抑制的で、各国政府がメディア支配を通じてデモの飛び火を阻止しようとするねらいも透けて見える。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報