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楽天を救った銀次 捕手経験のある野手に脚光
スポーツライター 浜田昭八

2019/4/14 6:30
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捕手がいなくなったので試合ができないとなると、没収試合が宣告されて0-9の負けになる。ほかのポジションなら専門外の代役を起用できるが、捕手に関しては難しい。ケガを恐れてだれもやりたがらないし、首脳陣も無理強いはしにくい。

7日のオリックス―楽天(京セラドーム)で、楽天が捕手不在のピンチに直面した。九回表、3点ビハインドから追い付いたが、その裏から守る捕手がいない。この日のベンチ入り捕手は2人。スタメンの嶋基宏は七回に代打を送られて退き、交代出場の捕手足立祐一も九回に代打を出された。

さて九回裏から、だれがマスクを被るのか。なんと、一塁手の銀次だった。2006年に捕手で入団したが、09年秋に打力を買われて内野手に転向。1軍捕手としての公式戦出場はない。それでも、3人の救援投手の投球を無難に捕り、延長十二回引き分けまで4イニングを守り切った。オリックスの快足西浦の二盗を阻む好守もあり、チームの3連敗を防いだ功労者だった。

オリックス戦の九回から捕手を務めた楽天・銀次。4イニングをミスなく務め、引き分けに持ち込んだ=共同

オリックス戦の九回から捕手を務めた楽天・銀次。4イニングをミスなく務め、引き分けに持ち込んだ=共同

この銀次の捕手起用の裏には、監督の平石洋介の大事をとった準備があった。楽天は投手陣が弱い。細かくつなぐ継投策が多くなるので、ベンチ入りの投手を増やしたい。そのために、出番がまれな3人目の捕手を削って、捕手2人制をとることにした。

だからといって、捕手がいないという事態は避けねばならない。そこで捕手経験がある内野手の銀次と内田靖人(現在は2軍)に「緊急時には捕手起用がある」と告げ、開幕前から捕球練習を積ませていた。その練習が十分でないうちに緊急事態に出くわしたのは誤算だったが、危機管理の用兵はひとまず報われたといえる。

引き分けがない大リーグでは、野手が緊急登板するなど、専門外のポジションでプレーするケースがよくある。さすがに「急造捕手」はめったにないだろうと思われるが、あった。1995年にロッテ監督だったボビー・バレンタインはマリナーズで現役だったとき、2試合でマスクを被っていた。

内野手として10年、5球団でプレーしたバレンタインだが、外野、指名打者を含めてほとんど控えだった。「出場できるなら、どこでもよかった」と、経験がない捕手を買って出たそうだ。日本の控え組もきっと同じだろうと思って臨んだロッテの監督時代に、大慌てしたことがあった。

第3捕手より控え投手に重心

95年5月のオリックス戦(千葉マリン、現ZOZOマリン)。猪久保吾一が風疹にかかったため、山中潔、定詰雅彦の捕手2人制で臨んだ。ところが、スタメン山中に代打を送ったあと、交代出場の定詰も八回のクロスプレーの判定を巡り審判に猛抗議して退場を命じられた。後釜を買って出る選手がいない。やむなく、中学時代に経験しただけという内野手、五十嵐章人を急造捕手に仕立てて、なんとか切り抜けた。

大まかな印象だが、今季はボールがよく飛んでいる。「打高投低」時代の再来を予感する。どこも楽天のように、ベンチ入り投手の数を増やしそうだ。他のポジションの控え組に比べて出場機会が極端に少ない3人目の捕手は、どうしても冷遇される。そこで重宝されるのが、楽天の危機脱出で役立った銀次のような捕手経験のある野手だ。

選手の多くは高校の下級生だったころに、バッティング捕手を体験している。オリックスの三塁手・頓宮裕真のように亜大まで捕手だった選手は、危機対処に備える3人目捕手を兼ねるのに格好の存在だろう。第3捕手に代わって戦力が大幅ダウンしないよう、また本人のケガを避けるためにも、捕球練習だけはまめにやっておかねばならない。

野球はサッカーやラグビーなどの他の球技と同じように、いったんベンチへ下がった選手は再出場できない。このルールに手を加えて「捕手がいない」問題を緩和し、柔軟な用兵を展開できないものか。ソフトボールの国際大会など、一部で実施されているリエントリー(再出場)制の導入だ。

ただし、それは捕手が試合中にケガをして、代役がいないときに限る。再出場が他のポジションにまで及ぶと、起用する側も観戦する側もわずらわしく、野球の本質を損なう恐れがある。起用がまれな3人目をベンチに入れる人材のムダ遣いを避けることだけにとどめたい。

(敬称略)

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