2019年4月22日(月)

本庶氏、小野薬品を改めて批判 オプジーボ対価巡り

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科学&新技術
2019/4/10 19:47
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京都大学の本庶佑特別教授らは10日、記者会見を開き、小野薬品工業と共同で取得したがん免疫薬「オプジーボ」に関する特許の対価について、引き上げを求めた。2006年に結んだ契約について「契約時の説明内容が不正確」と改めて同社を批判した。ただ、京大の契約に関する経験や交渉力の不足が原因となった面は否めず、産学連携を進めるうえでの課題を示した形だ。

がん治療薬の特許料について話す京都大学の本庶佑特別教授(左)(10日、京都市左京区)

がん治療薬の特許料について話す京都大学の本庶佑特別教授(左)(10日、京都市左京区)

本庶氏は1992年にオプジーボの開発のもととなった物質「PD-1」を発表。その後、小野薬品と製品化の交渉を始め、03年にがん治療法に関する特許を出願。06年に特許のライセンス契約をした。本庶氏は18年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

この契約について本庶氏は小野薬品との再交渉を求める考え。本庶氏は取り分について、オプジーボによる小野薬品の売り上げや他社からのライセンス収入などが1%以下になっていたことを公表。代理人弁護士は「常識的なレベルではない」と批判した。本庶氏らは訴訟は避け、今後も小野薬品に直接交渉するよう求めた。

本庶氏は抗がん剤として使う用途を視野にいれた特許と考えていたが、小野薬品はPD-1を作る遺伝子という狭い範囲の特許とみて契約を提示したため、料率の低い契約になったとしている。「用途特許ならば5~10%が常識的なレベルだ」(代理人弁護士)

小野薬品は日本経済新聞社の取材に「記者会見での情報の内容を確認していきたい」とコメントした。

本庶氏と小野薬品との対立は、産学連携の中で知的財産の扱いが不十分だったことが原因だ。

本庶氏は03年の特許について当初、京大に出願を要請した。だが当時、京大には知財を扱う専門人材やノウハウがなく資金も不十分だった。結果、大学ではなく本庶氏本人が、小野薬品と共同出願した経緯がある。

大手製薬の知的財産部門担当者は「こうした契約には通常相場はないが、ごく初期の特許の料率が1ケタになることは珍しくない。売れてから『引き上げろ』と言い出すのはおかしい」と話す。

新薬開発には巨額なコストと膨大な時間がかかる。しかも成功確率は約3万分の1と非常に低く「ばくちのようなもの」と言われることもある。

その代わり成功すれば対価は大きい。例えば、ノーベル生理学・医学賞を受けた大村智氏がみつけた物質をもとに作られた抗寄生虫薬に関して、米製薬会社から大村氏に200億円余りの特許料が支払われた。

オプジーボが開発される以前は、がんの免疫療法は「海の物とも山の物ともわからないという扱い」(医療関係者)だった。その中で、当時売上高1000億円規模の中堅メーカーだった小野薬品がオプジーボに投じた開発費は数百億円に上る。同社はもともとがん治療薬には携わったことがなく、開発は大きな賭けだったといえる。

両者の対立がこれ以上長引くと、国が進める産学連携によるイノベーション創出の機運にも水を差すことになる。

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