世界同時減速の懸念 IMF、成長予測3.3%に下げ

2019/4/9 22:00
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【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)は9日に改定した世界経済見通し(WEO)で、19年の成長率予測を3.3%に引き下げた。日本や米国、欧州など主要国・地域の予測もそろって下方修正し、世界は同時減速の懸念がにじんでいる。米中の貿易戦争で世界的にサプライチェーン(供給網)が混乱し、英国の欧州連合(EU)離脱も企業や投資家の心理を下押ししている。

19年の世界の成長率見通しは1月時点で3.5%だった。3.3%にとどまれば16年と並び、金融危機後の景気回復が始まった10年以降で最も低い水準となる。IMFは四半期ごとにWEOを改定しているが、下方修正は3期連続だ。7月時点では3.9%を見込んでいたが、今では一転して「世界の70%の地域で景気が減速している」(ラガルド専務理事)。

世界経済を下押しするのは米中の貿易戦争だ。19年の世界の貿易量は3.4%増にとどまり、1月時点の予測から0.6ポイントも下方修正した。3カ月移動平均でみると、世界貿易の伸びは17年中の前年比3~5%から急収縮し、今年1月にマイナスに転落した。企業心理の悪化で設備投資も停滞し、世界全体で成長機運がそがれている。

日本の19年の成長率は1.0%と予測し、1月時点から0.1ポイント下方修正した。日本は消費税増税を予定するが、IMFは安倍政権の内需喚起策で景気の大きな落ち込みは防げるとみる。ただ、外需の減退で成長見通しを引き下げた。20年は成長率が0.5%に鈍化し、増税の影響は避けられないと分析した。

米国の19年の成長率は2.3%と0.2ポイント下方修正した。18年の2.9%から減速し、大型減税の効果が薄れる20年には潜在成長率並みの1.9%まで低下するとした。貿易戦争の影響で輸出や設備投資が伸び悩み、18年末から35日間続いた政府機関の一部閉鎖も内需を下押ししたという。

中国は6.3%と見込んだ。18年の6.6%から減速し、天安門事件の直後だった1990年(3.9%)以来の低い伸び率になる。財政出動や緩和的な金融政策で前回予測より0.1ポイント上方修正したが、逆に過大債務のリスクが高まる可能性があるとも指摘した。

欧州も政策リスクで減速感が強い。19年のユーロ圏の成長率は1.3%と前回予測から0.3ポイント下方修正した。自動車分野の不振が続くドイツと債務リスクのあるイタリアは、そろって0.5ポイントの大幅な下方修正となった。EU離脱問題で混乱が続く英国は成長率予測を0.3ポイント引き下げたが、「合意なき離脱」となれば一段と大幅な景気下振れが避けられない。

IMFは世界経済が20年には3.6%成長に復すると予測した。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを休止して金融市場の混乱が収まり、中国の景気刺激策の効果が世界的に波及するとみた。米中の貿易交渉が決着して相互に制裁関税を撤回すれば「企業や投資家の心理が改善する」とも指摘した。

ただ「先行きのリスクは下方に傾斜している」との懸念も示した。トランプ米政権は輸入自動車に25%の関税を課す新たな貿易制限を検討しており、米中交渉が妥結しても世界貿易が急回復する見通しを立てにくい。主要国の景気減速は資源安に直結し、中東や中南米などの経済成長も下振れしている。

日米欧と新興国による20カ国・地域(G20)は11日からワシントンで財務相・中央銀行総裁会議を開く。IMFがWEOでG20に求めたのは「政策面での失態を防ぐこと」という極めて控えめな提言だ。世界全体を底上げする国際協調策は望みにくく、日本が議長国を務める今回のG20には早くも無力感が漂う。

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