2019年6月26日(水)

フィンテック企業がIPOブームに乗らない理由

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フィンテック
2019/4/15 6:30
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CBINSIGHTS

2019年は米国のテクノロジー企業を中心に大型の新規株式公開(IPO)が相次ぎそうだが、フィンテック分野ではスタートアップ企業に上場を手控える動きが出ている。フィンテックはベンチャーキャピタル(VC)の投資が積極的な分野だ。なぜ彼らは上場しないのか。背景には未上場でIPO前の大型資金調達が可能になってきた状況がある。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

2018年初めの時点で、VCの出資を受けているフィンテック分野のユニコーン(企業評価額が10億ドルを超える未公開企業)は世界に25社あり、企業評価額は合計で760億ドルに上っていた。

このVC投資の熱狂ぶりから、こうした評価額の高いスタートアップ各社は勢いに乗り、IPOを果たすとみられていた。

2018年初めの時点でのフィンテック分野のユニコーンは25社、評価額は計759億ドル

2018年初めの時点でのフィンテック分野のユニコーンは25社、評価額は計759億ドル

オランダの決済スタートアップAdyen(アディアン)は18年6月に上場し、大成功を収めた。上場初日には株価が90%上昇し、時価総額が158億ドルに達した。

だが結局、18年に上場したフィンテック分野のユニコーンは同社を含む3社にとどまった。他の2社はソーシャルレンディングの英Funding Circle(ファンディングサークル)と、住宅リフォーム向け融資を提供する米GreenSky(グリーンスカイ)だった。

VC投資の熱狂ぶりにもかかわらず、IPOを果たしたフィンテックのユニコーンはわずか3社だった

VC投資の熱狂ぶりにもかかわらず、IPOを果たしたフィンテックのユニコーンはわずか3社だった

このことは、多くのフィンテック分野のユニコーンがIPOを最優先していないことを示している。

消費者金融の米Affirm(アファーム)や、オンラインで医療保険を提供する米Oscar Health(オスカーヘルス)、クラウドを活用して人事サービスを提供する米Gusto(ガスト)など評価額の高いフィンテックのスタートアップ企業が、多額の事業運営費がかかるのに上場せずに済んでいる一因は、一度に1億ドル以上を調達する「メガラウンド」が増えているからかもしれない。

メガラウンドは様々な業界でIPOに代わる正当な資金調達手段として台頭している。レイター(後期)ステージのスタートアップ企業への資金流入はますます増えているため、各社は運営資金を確保するために当局の審査や市場に自らをさらけ出す必要がなくなっている。

18年にフィンテック分野のスタートアップ企業が実施したメガラウンドの件数は52件、調達額は計250億ドル弱といずれも過去最高に達した。

18年のフィンテック企業52社によるメガラウンドでの調達額は計248億8000万ドルに達した
(14~18年のフィンテック企業によるメガラウンドの件数)

18年のフィンテック企業52社によるメガラウンドでの調達額は計248億8000万ドルに達した
(14~18年のフィンテック企業によるメガラウンドの件数)

18年にフィンテック分野のスタートアップ企業が実施した資金調達ラウンドの件数は1707件、調達額は400億ドル弱で、前年の1480件、180億ドルから大幅に増えた。

18年のフィンテック企業への投資額は390億ドルを超えた
(14~18年の世界のフィンテック企業による資金調達ラウンドの件数と調達額)

18年のフィンテック企業への投資額は390億ドルを超えた
(14~18年の世界のフィンテック企業による資金調達ラウンドの件数と調達額)

メガラウンドが増加傾向にあることを考えると、フィンテック企業のIPOの低迷は今後数年間続くとみられる。

フィンテック企業のメガラウンドは過去最高水準に達しているため、IPOは遅れ気味に

フィンテック企業のメガラウンドは過去最高水準に達しているため、IPOは遅れ気味に

中国のLu.com(陸金所)やオスカーヘルス、米新興証券会社Robinhood(ロビンフッド)、データ解析の米Dataminr(データマイナー)などのフィンテック企業はいずれも、18年に実施した資金調達ラウンドで一度に3億ドル以上を調達した。こうした企業は今後何年も、上場しなくても事業を運営できる可能性が高い。

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