2019年8月20日(火)

郵政民営化、形から 政府保有株を追加売却へ

2019/4/10 1:31
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政府が日本郵政株の追加売り出しを決めた。発行済み株式総数に占める保有比率が「3分の1超」に下がれば、形のうえでは郵政民営化法が定める日本郵政の民営化が完了する。ただ現在の同社はユニバーサルサービスを義務づけられた郵便局網を抱えながら、傘下の金融2社に収益を依存する構造が続いている。成長事業を育て、民営化の理想に見合う経営体制をどう築くかが課題だ。

かんぽ生命に続き親会社の日本郵政への政府出資も下がり、民営化が大きく進む

かんぽ生命に続き親会社の日本郵政への政府出資も下がり、民営化が大きく進む

今回の売り出しは日本郵政、ゆうちょ銀行かんぽ生命保険が同時上場した2015年と17年の第2次売却に次ぐ3回目。郵政民営化法はNTT日本たばこ産業(JT)にならい、政府の株式保有比率について3分の1を超えるよう規定しており、法律に基づく形式上は民営化が完了する。

財務省の担当者は市場環境を踏まえ「売却を始める時期と判断した」と述べた。東日本大震災の復興財源を確保する法律で22年度までに財源の捻出も求められている。

日本郵政幹部は「国との関係がだいぶ変わるだろう」と期待する。旧電電公社が前身のNTT、旧専売公社が民営化したJTは国の関与が薄れ、成長企業となった。もっとも、携帯電話が伸びたNTTなどと異なり、日本郵政には柱となる成長事業が見当たらない。しかも過疎地域を含めて全国2万4千局の郵便局を抱える。

郵便局ネットワークの維持は日本郵政に課せられた法律上の義務だが、手紙やはがきの需要は減少の一途をたどる。米保険大手アフラック・インコーポレーテッドの発行済み株式の7%を年内に取得すると決めたように、M&A(合併・買収)で成長事業を取り込むことが欠かせない。

郵政民営化の精神に沿えば、現在は日本郵政グループの収益を支えるゆうちょ銀とかんぽ生命の金融2社は、いずれグループから切り離される。ゆうちょ銀は1日から貯金限度額を2倍の2600万円に引き上げたが、次の引き上げや撤廃には日本郵政からの出資比率を3分の2まで下げる必要がある。だが日本郵政グループとして金融2社の分離まで見据えた長期戦略は描けていない。

株式市場への影響について松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「規模が非常に大きく、今の売買高が薄い市場から資金を吸い上げる恐れがある。換金売りを誘発する懸念も残る」という。「日本郵政による自社株買いなど何らかの措置を検討する必要がある」と指摘する。

一方で、各国の金融緩和が長期化するとの観測から日経平均株価は年初来高値の更新をうかがう。「個人投資家の投資意欲が回復しており、売り出しは吸収可能」(カブドットコム証券の河合達憲投資ストラテジスト)との見方がある。景気に影響が出かねない10月の消費増税より前に、株式売却にメドをつけたい政府側の狙いも透ける。

日本郵政の株価は9日終値で1286円と、15年の1次売り出し価格1400円、17年の2次売り出し価格1322円をいずれも下回る。当時購入した株主は含み損を抱えており「追加売り出しに応じないだろう」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジスト)との声もある。

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