2019年8月23日(金)

シンガポール、水値上げに苦慮 マレーシアが要求 首脳会談でも平行線

2019/4/9 17:57
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【シンガポール=中野貴司】シンガポールが水の供給を受けるマレーシアからの値上げ要求に苦慮している。両国の首脳は9日にマレーシアで会談し、水問題も協議したが、隔たりは埋まらなかった。海水淡水化施設を運営する国内企業も経営不振に陥っており、水の安定供給に向けた課題は多い。

記者会見するシンガポールのリー・シェンロン首相(左)とマレーシアのマハティール首相(9日、クアラルンプール近郊)=AP

シンガポールのリー・シェンロン首相とマレーシアのマハティール首相は9日の会談後、「水供給契約の見直しに関する両国の異なる立場に留意する」との共同声明を発表した。声明では両国間で問題を解決できない場合、国際的な仲裁機関に持ち込む可能性にも言及した。

両国は1962年、マレーシアが1000ガロンあたり1円未満の価格で、シンガポールに水を99年間供給する契約を結んだ。18年5月に首相に復帰したマハティール氏は「裕福な国であるシンガポールが理屈に合わない安い価格で水を買っている」と、シンガポールに価格の引き上げを求めていた。

9日の首脳会談でも水問題は主要議題の一つとなったが、見解の相違は解消せず、両国の司法長官が今後協議を続けることになった。シンガポールのリー首相は会談後の共同会見で「62年の契約は両国が従わなければいけない基本的な文書だ」と強調。すぐに契約の見直しに応じるのは難しいとの認識を改めて示した。マレーシアの水が持続的な供給や環境汚染の面で課題を抱えているとも指摘した。

これに対し、マハティール氏は「水契約の問題の解決はマレーシアにとって最優先課題だ」として、早期決着の必要性を訴えた。

シンガポールにとって水の確保は安全保障上の重要課題だ。下水を飲み水に再生する技術を取り入れるなどして自給率を高めてきたものの、マレーシアからの輸入に頼る状況はなお変わらない。

下水の再生とともに、輸入依存を減らす有望技術と位置づける海水の淡水化も試行錯誤が続く。大型の海水淡水化施設の運営を担ってきたシンガポールの水処理企業、ハイフラックスは裁判所から債務返済の猶予を受けるなど、経営悪化が続いている。水の品質を維持するための設備更新が滞っているとされ、政府は4月末までに淡水化施設を接収するかどうかを決める方針だ。

9日の首脳会談では、水問題以外の両国間の懸案も協議した。両国が港の境界線を拡張するなどして対立していた領海や領空問題では協議の進展を確認した。20年5月まで凍結中の両国間の高速鉄道の建設計画については、再開に向けてマレーシアがコスト削減策を引き続き検討することになった。

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