2019年5月23日(木)

米、対イラン強硬姿勢一段と 防衛隊を「テロ組織」に
イラン猛反発 中東情勢不安定化も

トランプ政権
中東・アフリカ
北米
2019/4/9 17:49
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トランプ米政権が8日、イランへの圧力を強めるため、精鋭部隊であるイラン革命防衛隊を「外国テロ組織」に指定すると決めた。イランは逆に米軍を「テロ組織」に認定するなど、反米強硬派を中心に猛反発している。米国にはイスラエル支援の思惑ものぞくが、強硬な政策は中東情勢をさらに不安定にするおそれがある。

イラン革命防衛隊が軍事ショーで展示したミサイル群(テヘラン)=AP

イラン革命防衛隊が軍事ショーで展示したミサイル群(テヘラン)=AP

「イラン革命防衛隊はテロ組織だ。米兵の安全を守るためにできることはすべてやる」。ポンペオ米国務長官は8日のFOXニュースの番組でこう語り、決定の正当性を改めて主張した。トランプ大統領も「イランの政権への最大の圧力の範囲や規模を拡大するものだ」と声明で強調した。

革命防衛隊は1979年のイスラム革命後、最高指導者だった故ホメイニ師の指示で国軍とは別に設立された精鋭部隊だ。聖職者が支配するイランのイスラム体制の守護者を自任し、建設業、製造業、石油生産などイラン経済の多くの分野で支配的な地位にある。

今回の決定によって米企業は防衛隊とのあらゆる物資の取引が禁じられ、違反すれば刑罰を科せられる。第三国の企業も取引すれば制裁対象になるリスクもある。

米メディアによると、国防総省と米中央情報局(CIA)は革命防衛隊のテロ組織指定に反対した。イランが、国外にいる米の特殊作戦部隊などを報復目的で攻撃する危険が増すためだ。

最後に押し切ったのは、対イラン強硬派のポンペオ氏とボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)だ。米国は84年にイランを「テロ支援国家」に指定済みだが、外国政府の機関をテロ組織と指定するのは初めてだ。

トランプ政権は2018年5月にイラン核合意を破棄して以来、経済制裁を強めてきた。今回の決定は象徴的な意味が大きい。イランとの経済関係をなんとか保とうとする欧州にくぎを刺す狙いがある。

テロ組織指定は15日から効力が発生する。このタイミングでの公表には、9日に総選挙を控えたイスラエルのネタニヤフ首相を側面支援する効果もある。イランを最大の脅威と位置づけるネタニヤフ氏は、米国による革命防衛隊のテロ組織への指定を「外交上の成果」として有権者に訴えることができる。

「トランプ大統領はイランの攻撃とテロから世界を守り続けている」。ネタニヤフ氏はさっそくツイッターで謝意を示した。

イラン政府は革命防衛隊のテロ組織への指定を「レッドライン(越えてはならない一線)」と位置づけてきた。今回の決定はイラン国内で一段と反米強硬派を勢いづけかねない。最高指導者ハメネイ師(79)は9日、「米は(今回の決定で)イランと革命を敵に回した」と批判した。

穏健派のロウハニ大統領は米国が核合意から離脱した後も原子力関連の活動を抑え、国際的な取り決めを守る姿勢をアピールする。「米国の単独行動主義」への批判に国際社会が同調することに期待しているためだ。

しかし、そもそも核合意に批判的だった強硬派は挑発的な言動でゆさぶりをかけ、穏健派の立場を弱めようとしている。強硬派主導でイランが核武装の決意を宣言したり、秘密裏に核開発を進めたりするリスクが増すおそれがある。

ロウハニ大統領に近いザリフ外相が2月にいったん辞意を表明し、直後に撤回した事件は、穏健派と強硬派の対立が表面化したとみられている。両派の主導権争いは高齢のハメネイ師の後継者選びにも影響する。

中東情勢はさらに流動化しそうだ。米軍が5000人規模で駐留するイラクでは、革命防衛隊と緊密な関係にあるイスラム教シーア派の民兵組織が挑発的な動きをとる可能性もある。

シリアでもイランの影響力は増している。シリアのアサド政権を支えることで共同歩調をとるロシアや、反米色を強めるトルコとの連携に傾斜する可能性もある。

トランプ政権は、オバマ政権時代まで存在していた非公式のイランとの対話ルートの多くもつぶした。情報伝達のミスや誤解から両国がかんたんに衝突コースに入ってしまうリスクがある。

(ワシントン=永沢毅、ドバイ=岐部秀光)

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