2019年5月21日(火)

今日も走ろう(鏑木毅)

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殻破って話しかけよう 気軽な一言、大きな進歩

2019/4/11 6:30
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長年、あるコンプレックスに悩まされてきた。それはコミュニケーション力不足。私はとりわけ初対面の人と話す際、表面上は友好的に取り繕ってはいるもののぎこちなく、うまく言葉をつなげない。

ところが仕事上そうとばかり言っていられない。過去には国際トレイルランニング協会の理事を務め、現在も富士山一周をめぐるトレイルランニングレースの最高責任者であり、国際人としての立場とふるまいをどうしても意識する。これが案外難しいのだ。もちろん言葉の壁や、文化、生活習慣の違いにもよるだろうが、思うにコミュニケーションの取り方に難しさの理由があるのではないだろうか。

フランス人ランナーと友になれた(2014年、北米ロッキー山脈でのレース前)

フランス人ランナーと友になれた(2014年、北米ロッキー山脈でのレース前)

例えば仕事で欧米を訪れると何かにつけて立食パーティーが催される。ホールのあちらこちらで、フレンドリーな会話をしつつ自らを売り込み、相手から得た情報を仕事につなげる人の姿が。会議では激しく議論し合っていても、ブレークタイムになると軽口を交わし談笑する光景をよく見かける。日本では得られない情報、人脈を獲得できるこうした環境は魅力的で、私情を超えた本音の議論が重要だとわかっていても、海外の社交の場で私は、数人と当たり障りない会話をして早々に退散してしまう。どうしても雰囲気になじめない。

欧米人はごく自然にコミュニケーションをとりつつ本音をぶつけ合う。非常に合理的だ。ほぼ単一民族の日本では以心伝心という言葉があるようにあえて口に出さなくても伝わる文化がある。さまざまな民族が入り交じる欧米では事情が異なるのだろう。そうした背景を考慮しても、知らない者同士が前向きに会話を交わす文化が何ともうらやましい。

かつてロンドンの帰宅ラッシュの車中で、隣の紳士が「ロンドンの地下鉄のラッシュもなかなかでしょう?」と話しかけてきた。私が日本人だとわかり、好意も込めて声をかけてくれたおかげで緊張がほぐれリラックスできた。日本であれば気軽な一言を見知らぬ人、それも外国人相手にかけることは極めてまれであろう。

レストランやホテルでの精算時に「おいしかったです」「いいサービスでした」といった気軽な一言を私はどうしても口に出せない。ところが、妻はどんな状況でどんな人に出会ってもごく自然にコミュニケーションをとっており、ちょっと妬ましく思うほど。なぜ私にはできないのだろうか、と妻に尋ねてみたら、「あなたは変なプライドを持っているからではないか」と言われた。

自分の一言に相手がもしけげんな顔でもしたら(別に気にしなくてもいいのに……)とつい考え、必要な言葉以外は口を閉ざしてしまう、そんな私の心中を言い当てられた気がした。

最近、自分に子どもがいるせいか、子ども連れの人を見ると気軽に「何歳ですか」「かわいいですね」などと話しかけられるようになった。他人から見ればささいなことでも私にとっては大きな進歩。これからも自分の殻を少しずつでも破り、成長していきたいものだ。

(プロトレイルランナー)

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