ゴーン元会長、動画で無実主張 名指し批判はカット
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)の特別背任事件で、弁護団は9日、日本外国特派員協会(東京・千代田)で記者会見し、ゴーン元会長の声明動画を公開した。元会長は「すべての嫌疑について無実だ」と重ねて主張した。動画は東京地検特捜部による再逮捕を予想し、再逮捕前日の3日に撮影したという。
弘中惇一郎弁護士は記者会見で、元会長の10日間の勾留を認めた東京地裁の決定を不服として、10日にも特別抗告すると明らかにした。また元会長には黙秘するようアドバイスしたという。
公開された動画は7分37秒間。元会長は手元のペーパーにときおり目を落としながら、英語で自らの主張を述べた。再逮捕容疑となった「オマーンルート」の特別背任事件については言及していない。
元会長は「今起きていることは『陰謀』だ」と強調。日産と仏ルノー、三菱自動車との3社連合が「統合、合併に向けて進むことが、ある人たちに脅威を与え、日産の独立性を脅かすと恐れた」と指摘した。
さらに「数名の幹部が自分勝手な恐れを抱き、会社の価値を毀損している」と非難。「汚いたくらみを仕掛けた(人物の)多くの名前を挙げることができる」と述べたが、幹部の氏名は名指しした場面はなかった。弁護団は「ゴーン元会長の同意を得て、我々の判断でカットした」と説明している。
日産について「私の愛情は少しも変わることはない」と訴える一方、「日産の業績が低下していることを心配している」と懸念を表明。矛先を現経営陣に向けて「日産の業績を向上させるビジョンもなく、アライアンスの将来を強化するビジョンもない」と一方的に批判した。
動画の最後で「強く望むのは公正な裁判を受けることだ。私の無実を証明したいと切に願っている」と述べて、声明を締めくくった。

弘中弁護士は「一度保釈され、再び逮捕されるのは大変な身体的、精神的ダメージを負う。残虐な仕打ちで自白を強要している」と捜査を批判。「不当な圧力をかけ、屈服させる狙いだ」と検察側を強くけん制した。
日産の広報担当者は「特にコメントはない」と話した。
ゴーン元会長は3月6日の保釈後、都内の住居で家族と生活。4月4日に特捜部に会社法違反(特別背任)の疑いで4度目の逮捕をされた。妻のキャロルさんはその後、フランスに出国したが、裁判所による証人尋問には応じる意向を示しているという。
ゴーン元会長の4度目の逮捕容疑となった特別背任事件では、オマーンの販売代理店に支出された日産資金の一部が、ゴーン元会長が実質管理するレバノン企業の口座に移された疑いがある。

日産自動車が選択を迫られている。
内田誠新社長のもと、業績をどう立て直すのか、筆頭株主である仏ルノーとの関係をどう再構築するのか。