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ベッキー 心が壊れた28歳、ペースを落とし乗り切る

NIKKEI STYLE

日経doors

20代前半は無我夢中で走り続けたというタレント・歌手のベッキーさん。ところが28歳になる頃、心が壊れ、体に違和感を覚えたといいます。その苦境をどう乗り切ったのか。そこで見えてきた世界とは。20代後半から現在に至るまでの心の変化、キャリアの考え方や将来の目標について、胸の内を明かしてくれました。

ペースを落とすのはすごく怖かった

―― 20代前半、「有名になりたい」という目標に向かって、無我夢中で邁進されたと伺いました。ただ、そんな仕事に対する姿勢も28歳を境に変化がでてきたそうですね。

ベッキー 28歳で突然、心がパリーンと壊れた感じでした。体に違和感を覚えて、「なんだか私、いつも疲れているな」と思ったり、心が揺れて「本当にこれでいいのかな」と悩み始めたり……。限界を感じるようになりました。

―― これまでのハードスケジュールに体と心が悲鳴を上げてしまったんですね。

ベッキー そうだと思います。このままではすべてがダメになってしまうと思い、仕事は徐々にペースダウンしました。週に一度はオフをもらって、きちんと休むことにしたんです。

ただ、これまで走り続けてきただけに、ペースを落とすことはものすごく怖くて、勇気がいることでした。「あいつダメになったと思われるかもしれない」とか、「みんなが離れていってしまったらどうすればいいのか」とか、そんなことばかり頭をよぎりました。けれど、その時の自分に「大丈夫。そんなことで人は離れていかないから」と伝えたいですね。それまでちゃんと頑張っていれば、少し仕事のペースが落ちたくらいで周囲の信頼を失ってしまうということはないものだと思います。

読者の皆さんの中でも頑張っている人ほどペースを落とすのは難しいと思いますが、女性は体が変化しますし、ムリをし過ぎるとすべてが壊れてしまうことも。20代ですべての花を咲かせようとしなくていいと思います。

一つ種をまくとどうしても結果を求めてしまいますが、結果はすぐに出るものではありません。桜が春にしか咲かないように、まいた種はちょうどいい時期、その人にとっての「春」にぴったりに咲くものだと思います。だから、あの頃の自分も含め、多くの女性に無理をし過ぎないでと言いたいですね。

何かを手放したら、何かが入ってくる

―― 仕事のペースを抑えたことでどんな変化がありましたか?

ベッキー 想像以上に得たことがたくさんありました。人生って不思議なもので、USBメモリーのように容量が決まっていて、何かを手放したら何かが入ってくるんです。一つ得るには、一つ手放さなければいけないんだなと実感しました。何も失わずにすべてを手に入れようとするのはワガママだと思います。

得たことで特に大きかったのはすてきな友人に出会ったことですね。「ああ、この人は私の人生を変えるために現れた」と思うこともありました。自分で開けられなかった引き出しも他人が開けてくれることもあるんだなと。

―― 人脈が広がっていったんですね。いろいろ刺激も受けましたか?

ベッキー 友人たちの助言で肩の力を抜いて人生を送ることができるようになったと思います。20代前半は「初めて会う人とはご飯を食べに行かない」とか「翌日仕事のときは遊びに行かない」などと、自分にルールを課していたんですが、友人の一言でそんなルールもやめました。「明日仕事だからってなんで来れないの? 来ればいいじゃん」と言われて。「あ、そうか、そうだよね」と。初めましての人とも食事に行くようになりました。

頑固にならず、人の意見も聞くことにしました。例えば、爪も友人の一言で変えたんですよ。20代の頃はネイルクイーンに選ばれたこともあるくらい、爪をいろいろと装飾していました。ただ、新しく出会い、友達になった年下の女優さんに「30歳になったら、爪を飾るのをやめてもいいんじゃない」と言われて。やめてみるとナチュラルな爪の素晴らしさを改めて知りました。料理もしやすくなったし、ファッションや仕事によって爪の色を簡単に変えることができて表現の幅が広がりました。友人の助言によって視野が広がったなと感じています。

人脈が広がっただけでなく、周囲の人に弱音を吐けるようにもなったんです。周りのスタッフさんや身近な方には「やっと言ってくれたね」と喜ばれたんですよ。

人間関係が変化したことで、心のバランスが取れるようになり、また新たな気持ちで仕事に打ち込むことができるようになりました。仕事のペースを抑えたことが、結果的には仕事にもプラスになったと思います。

手は抜かないが、肩の力は抜いていく

―― ペースを落としたことで、さまざまないい効果があったのですね。ただ、その一方で、過去の頑張っていた自分に助けられることもあったのでしょうか。

ベッキー それを感じたのは特に30代になってからですね。30代に入り、しばらく仕事を休みました。その時に20代でご縁があった方が「ベッキーを応援したい」とお仕事の話をくださることも。20代の時に全力で仕事をしていたからこそ、すてきなご縁につながったと思います。

―― 今後はどのように仕事と向き合っていきたいですか。

ベッキー 手は抜かないけれど、肩の力は抜いて取り組んでいこうと思っています。バラエティー番組への出演が減った分、映画に出演するなど他のお仕事が増えてきました。時間ができたからこそ、映画の仕事にもがっつり打ち込むことができています。年末には絵の個展を開く予定もあります。

絵は1年半前に突然描いてみようと思い立ったことがきっかけです。以前のスケジュールだったら絶対にできなかったことですが、今はさまざまなことにチャレンジする時間も増えました。失ったことをどうプラスに変えていくかが重要だと感じています。

ベッキー
タレント・歌手。1984年3月6日生まれ、35歳。神奈川県出身。14歳芸能界をデビュー。以降、数多くのバラエティやトーク番組で活躍。昨年、デビュー20周年を迎えた。

ワンピース/Sea New York(http://somnium-web.com/)、ピアス/somnium(https://sea-ny.com/)

(取材・文 飯泉梓=日経doors編集、写真 花井智子)

[日経doors2019年3月20日付の掲載記事を基に再構成]

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