キャッシュレス時代の紙幣刷新 経済効果は限定的か - 日本経済新聞
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キャッシュレス時代の紙幣刷新 経済効果は限定的か

政府・日銀による今回の紙幣刷新は、現金を使わないキャッシュレス決済が急速に広がるなかで実施される。暮らしの中で紙幣を使う機会は少しずつ減り、年内には電子マネーによる給与払いも解禁される見通しだ。銀行はATMの削減に動いている。自動販売機の改修なども含めた経済効果は、かつての刷新に比べると限られるとの見方もある。

新紙幣への切り替えは2024年度上期。5年間の猶予期間ができたことで、対応を迫られる金融機関などには安堵が広がっている。ある大手銀幹部は「新紙幣が出回れば現在の紙幣と混在するため、機械の設定やシステムの改修が必要になる」と話す。2004年の前回の刷新の際は、発表から実際の切り替えまで2年間だった。

一方、政府は足元で20%にとどまるクレジットカードや電子マネー、QRコードなどによるキャッシュレス決済の比率を2025年までに40%に高める目標を掲げている。10月に予定している消費税増税に伴うポイント還元もキャッシュレス決済が対象だ。現金払いができない飲食店すらでてきている。

キャッシュレス化の「最後のハードル」とされてきた友人同士の割り勘でも「LINEペイ」や「楽天ペイ」などを使う人が増えている。現金の輸送やATMへの補充などにかかるコストは年間2兆円とされる。「新紙幣導入で現金の運用コストに改めて注目が集まればキャッシュレスに追い風になる」(大手カード会社)との声も漏れる。

今回の紙幣刷新はあくまで最新の偽造防止策を取り入れることが一義的な目的だが、経済官庁幹部は「キャッシュレス決済が政府の目標どおりに進めば、今回が最後の紙幣刷新になるかもしれない」と話す。

日銀によると1万円札の発行高は19年3月時点で99兆7000億円。現在の紙幣に切り替わった04年当時の約65兆円から5割増えた。異次元の金融緩和を続ける日銀が大量に国債を購入し、市中にお金を供給し続けていることが背景にある。

ただ、このうち半分程度は金融機関に預けない「タンス預金」とみられている。今回の紙幣刷新はこうしたタンス預金をあぶり出す効果もありそうだ。

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