リビア、和平プロセス崩壊の危機 武装勢力が首都空爆

2019/4/8 18:00
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【イスタンブール=木寺もも子】国家が分裂状態にある北アフリカのリビアで、国連が主導する和平プロセスが崩壊の危機にひんしている。4月半ばの和平会議を前に、東部が拠点の武装勢力が首都に向けて進軍し、7日に空爆を実施したもようだ。政府側との衝突拡大で再び内戦になれば、難民の大量発生など、中東・北アフリカの新たな火種になりかねない。

首都トリポリに向けて進軍する「リビア国民軍」(7日、東部のベンガジ)=ロイター

元リビア軍の高級将校だったハフタル氏が率いる武装勢力「リビア国民軍」が4日から首都トリポリに向けて進軍している。7日にはトリポリ近郊で空爆を実施したようだ。

4日以降、トリポリ南部などで「国民軍」と暫定政府側部隊との衝突が続いている。現地メディアは暫定政府側の発表として、これまでに30人以上が死亡したと伝えた。治安悪化を受け、トリポリ周辺から逃れる市民も増えているという。

リビアは2010年以降に中東で広まった民主化運動「アラブの春」を受けてカダフィ政権が崩壊した。現在では複数の武装勢力が割拠し、分裂状態にある。これまでに国連が統一政府の樹立に向けて仲介を続けており、4月14~16日にトリポリで国連主導の和平会議の開催を予定していた。

和平会議では、シラージュ暫定首相を支援する国連などが仲介し、「国民軍」を含む各勢力が選挙の実施などを協議するはずだった。「国民軍」の進軍はこの和平会議の前に実行された。

「1年間かけて準備した会議を簡単に諦めない」。ガッサン・サラメ国連リビア特使は6日、会議を開催する考えを強調したが、治安が悪化しており、開催は厳しくなっているのが実情だ。

ハフタル氏の意図はどこにあるのか。日本エネルギー経済研究所の小林周研究員は「国連主導の和平プロセスでは自らの権益を失いかねないと考えたのではないか」と分析する。実力者のハフタル氏は東部のほか、油田のある南西部を押さえて軍事・経済力で優位に立っている。和平会議の中止や、会議での存在感を高めることを図った可能性がある。

リビアは石油輸出国機構(OPEC)加盟国で、世界10位の原油確認埋蔵量を誇る。原油市場ではOPECの減産に加え、リビアの政情不安も意識されている。足元の北海ブレントの先物相場は1バレル70ドル前後と約5カ月ぶりの高値水準で取引されている。

リビア情勢は周辺国や大国の思惑も絡む。ハフタル氏側は、暫定政府がイスラム原理主義勢力に近いなどと批判している。イスラム原理主義組織と敵対するエジプトや、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなどが支援している。3月には同氏がサウジを訪問し、サルマン国王とも会談した。

一方、暫定政府はこうした国々と対立するトルコやカタールなどと親しい関係にある。

もっとも、リビアの混乱は周辺国も望んでいない。リビアにはイスラム過激派が巣くい、内戦状態になれば勢力を拡大しかねない。地元メディアによると、リビアを支援するロシアやUAEも、ハフタル氏に軍事行動の自制を求めた。

リビアは欧州を目指す中東やアフリカからの移民や難民が地中海を渡る際の拠点になっている。ひとたび内戦状態に陥れば欧州に向かう難民が再び大量に流出するとも懸念されている。

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