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豊島逸夫の金のつぶやき

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金本位制支持者 2人がFRB入りか

2019/4/8 10:56
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米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長へのトランプ大統領による「口撃」が激しくなっている。パウエル氏との電話で「君という厄介者を背負い込んだようだ I guess I am stuck with you」と語ったと報道されたことがウォール街では話題だ。

批判の対象はムニューシン財務長官にまで及ぶ。「ムニューシン氏があいつに決めた Mnuchin gave me this guy」更に、人事面では、トランプ氏がFRBに2つの矢を放っている。

子飼いとみられる経済評論家、スティーブン・ムーア氏と元実業家のハーマン・ケイン氏を、2つあるFRB理事の空席ポストに指名を表明したのだ。両者が「金本位制支持者」であった過去が、市場では取り沙汰されている。

金本位制では、通貨供給量に一国の公的な金の保有量に相当する金額という上限を課す。信用通貨制度の対極にあり、中央銀行の恣意的なオペレーションを否定する制度ゆえ、FRBの存在を軽く見ることにもなりがちだ。「FRB議長も判断を誤ることがあるから、FRB議長の支配が及ばぬ金の価値に依存すべし」との議論にもなる。金本位制は「性悪説」、信用通貨制度は「性善説」ともいえる。

そもそも金本位制は過去の遺物だ。金融政策が節度を欠く結果として生じる過剰流動性バブルを抑止する効果はある。ただ経済成長に見合った通貨量が供給できず、金融政策を弾力的に運営できないという致命的欠陥をかかえる。

かくしてFRBの存在に疑義を唱えた人物のFRB理事指名が果たして上院で承認されるか。共和党が過半数を占めるとはいえ、承認のための議会公聴会で厳しい質問に窮するような事態、あるいは失言ともなれば承認も定かではなくなる。

市場が恐れる最悪のシナリオは、パウエル氏の更迭だ。「基本的に米国大統領はFRB議長を罷免できない」との見解が多数派だが、司法制度への人事介入でトランプ派を送り込み外堀を埋める事例もあり、絵空事とはいえない。

当面は、仮に12人の参加者からなる米連邦公開市場委員会(FOMC)にトランプ氏の意をくむ2人が加わっても、パウエル議長が主導する体制は揺らぐまい。FOMC参加者の金利予測分布を示す「ドット・チャート」に、利下げ予測派が2人増える程度の変化となろう。FOMC議事録に、「反対者2人」と書かれるような局面はあるかもしれない。トランプ氏の虎の威を借る2人が、FOMCでの議論で過激な発言に及び、紛糾するような場面もあり得よう。

とはいえトランプ大統領にとって悩ましいことは、仮に利下げしても、株安となる可能性があることだ。利下げするほど米国経済は悪化していると解釈され、市場では政治介入があらわな金融政策への不信感が強まり、投資家がこれを嫌気して株安を誘発するシナリオも考えられる。

トランプ氏の思考は「株価本位制」と言っても過言ではない。米大統領選挙を控え、全てパウエル氏に責任転嫁するのだろうか。ムニューシン財務長官も「共犯」の汚名を着せられるのか。そして、日本株もとばっちりを受けよう。米国が利下げすれば、ドル安・円高が急速に進むリスクがあるからだ。

一方、米国の利下げはドル安・新興国通貨の反騰を通じて新興国株に朗報となろう。新興国の中央銀行はここぞとばかり、国内景気の浮揚に向け利下げに走っている。

FRBは実質的に世界の中央銀行だ。そこにトランプ氏が政治介入する影響は世界に及ぶ。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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