2019年4月20日(土)

小笠原・西之島、噴火後の生態系は?上陸調査へ

社会
2019/4/7 20:33
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2013~15年の噴火でいったん生態系がほぼなくなった小笠原諸島・西之島(東京都)で、環境省などがこの夏、本格的な上陸調査をする。他の陸地から遠く離れた場所で海鳥や植物がどのように増えるかを継続的に観察できる世界でもまれなチャンス。3年前の前回より範囲を広げて詳しく調べる計画で、関係者は「新たな生態系の形成過程を明らかにしたい」と意気込む。

2018年7月に撮影した東京都・小笠原諸島の西之島(海上保安庁提供)=共同

2018年7月に撮影した東京都・小笠原諸島の西之島(海上保安庁提供)=共同

西之島は東京の南約千キロにあり、最も近い父島から130キロ離れた無人の孤島だ。13年11月に約40年ぶりに噴火する前は南北約600メートル、東西約700メートルの陸地にイネ科などの植物が生え、9種の海鳥が繁殖していた。

噴火を繰り返して面積は約10倍に拡大し、ほとんどが固まった溶岩に覆われた。過去に上陸経験がある森林総合研究所の川上和人主任研究員(鳥類学)は上空から撮影した写真などを分析。島で繁殖するカツオドリは04年に700ペアいたが、15年には激減していた。

16年の上陸時はカツオドリの数が噴火前と同規模まで回復している様子が見られた。その後のドローン調査で、地上で営巣する他の3種の海鳥の繁殖数も戻ったのを確認。一方、地中で営巣するアナドリの状況など、分からないことも多い。

溶岩にのみ込まれなかったわずかな土地ではイネ科の植物などを確認。昨年にドローンで回収した機器には、海鳥に寄生するダニの一種が50匹以上混入していた。

川上さんは「噴火は人の視点からはマイナス要素だと捉えがちだが、鳥にとっては必ずしもそうではない」と話す。例えばアオツラカツオドリは、島の拡大で新しくできた海岸に進出し、巣が増えた可能性がある。

海鳥の増加はさらに別の生物の分布拡大にもつながる。植物の肥料となる窒素やリンを含んだふんが拡散すれば、海鳥の体に付着した種子が落ちたときに育ちやすい環境になる。巣は高温多湿で快適なすみかを昆虫にも提供する。これまで淡水の池はなかったが、雨水がたまれば新たな生き物が定着するかもしれない。

噴火でできた新島はインドネシアやアイスランドにあるが、大きな島から30~40キロと比較的近い。別の陸地からはるか離れた西之島は「人間活動の影響を受けずに生態系ができる過程を見られる無二の場所」(環境省)といえる。

生物は小笠原諸島から鳥や風、海流によって運ばれると考えられる。川上さんは「人の影響を排除するため、小笠原諸島で外来種とされる種は西之島でも原則、駆除すべきだ」と話す。

上陸調査は今年8~9月に実施し、川上さんや昆虫、植物、地質の専門家が同行する。前回は上陸して調べたのは1日だけだったが、今回は1週間ほどかけて生物がいる場所を広範囲に調べる。前回の上陸後に噴火があったため、その影響も確かめる。結果を踏まえ、環境省は立ち入り規制に向けた措置や外来種駆除の方法を検討する予定で、生態系の観察も続ける。〔共同〕

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西之島噴火で安山岩マグマ[有料会員限定]

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