2019年5月20日(月)

英、4月半ばにも新景気統計 ビッグデータで早く

ヨーロッパ
2019/4/6 9:52
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【ロンドン=篠崎健太】英政府統計局はビッグデータを活用した3つの新たな経済統計の公表を4月半ばにも始める。日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)の申告状況や船舶の動きをリアルタイムで捉えるデータを基に、景気の変化をより早くつかむため開発した。統計局が取り組む統計改革の一環だ。

欧州連合(EU)からの英国離脱を巡る問題は貨物船の動向にも影響しそうだ(英南部のドーバー港、1月)=ロイター

1つ目がVATを使った景気指標だ。好調の割合から不調の割合を差し引く「ディフュージョン・インデックス(DI)」の形で指数化する。

過去1年間の課税対象売上高が8万5000ポンド(約1240万円)を超す事業主にVATの納付義務があり、原則3カ月ごとに手続きする。統計局は約220万の事業者の申告データを歳入関税庁から入手し、売上高や経費、還付申告の状況などからビジネスの好不調を映す指標をつくった。

統計局が過去のデータで試算したDIと国内総生産(GDP)の関係を分析したところ、経済に大きな負のショックが加わる変局点でDIが兆候を示した。例えば、2008年のリーマン・ショック時では、四半期のGDP伸び率が前期比マイナスに転じたと判明する5カ月前に、DIが変化し、マイナス成長への転換を示唆していた。

2つ目は、船舶の航行状況から輸出入の活発度合いを示す統計だ。算出には、国際条約で一定規模以上の貨物船に搭載が義務づけられる「船舶自動識別装置(AIS)」のデータを用いる。

AISは航行時に数秒ごと、停泊時は数分ごとに船舶の状態や位置を無線で発信するシステムだ。統計局が英主要10港での貨物船の出入りを統計処理し、輸入額との関係を分析したところ、高い相関関係が確認できた。

大きな付加価値を生む英南部イングランド地方の主要道路の通行量から経済動向を分析し、指標化した統計が3つ目だ。

これらの新たな統計は月次で、対象月の翌月には公表できる。統計局は18年、毎月末から約40日後にまとまる月次GDP速報値の公表を始めたが、これよりも早く経済の変調をつかめる。既存統計を補完し、経済の大きな変化をより早く察知する手段として政策当局者に提供する考えだ。

新たな統計の開発は、統計局内で17年に設けられた「データサイエンスキャンパス」という部門が主導した。ドイツの金融大手、コメルツ銀行の英国担当エコノミスト、ピーター・ディクソン氏は「統計機関によるビッグデータの活用は非常に好ましい一歩だ」と歓迎している。

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